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医療・健康・介護のコラム

真面目な人ほど苦しむ不妊治療と仕事の両立 厚労省が企業向けマニュアル策定へ

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ギリギリまで頑張ってポキン 2割は両立できず退職

 「なにも、これからのことを心配して、先に仕事をやめなくても」と思われるかもしれません。しかし実は、Yさんのような人は少なくないのです。NPO法人Fineが実施した「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート Part 2」(速報、 プレスリリース)に寄せられた意見の中にも「本格的に不妊治療を始めることになったので退職した」「体外受精に進むことになったので、仕事をやめた」というコメントがいくつも見られました。この調査でお分かりいただけるように、仕事と不妊治療が両立できず、退職してしまう女性が5人に1人います。実に2割です。非常に大きな数字ではないでしょうか。

 もちろん事前にやめる人の方が少数派で、「仕事を続けながら治療を始めたけれども、長引くにつれて両立が難しくなり、泣く泣く仕事をやめた」という人が大半です。しかし、いずれにしても共通していることは「真面目に頑張っている人ほど、両立に苦しんでいる」ということです。もしかしたら、どちらかを適当に考えることができれば、もう少しやりやすいかもしれないのに、どちらも一生懸命に頑張ろうとするあまり、ギリギリまで張りつめて、ある日ポキンと音を立てて折れてしまうように私には感じられます。

 Yさんに「お仕事はやめたいんですか?」と尋ねると「やめたくないです!」と即答でした。「仕事は大好きですし、やりがいもある。頑張って成績を上げたから、今の地位を獲得できたとも思っています。今のメンバーもチームワークもいいんです」とのこと。だからこそ「職場に迷惑をかけるのが心苦しい」と言います。Yさんの話を聞けば聞くほど「こんなに真面目で優秀な人が職場からいなくなってしまうなんて、なんともったいないことか」と残念でなりませんでした。

取り組む企業は増加

 このような「不妊退職」を防ごうと、両立に取り組む企業も増えてきました。業界によっては十数年前からすでに、不妊治療休暇を設ける企業などもありましたが、近頃は業界に関係なく広がりを見せています。昨年度実施された東京都の「チャイルドプランサポート事業」でも、93社が「不妊治療と仕事の両立」のための制度を取り入れたようです。Fineにも不妊や不妊治療への理解を促進するための企業内研修や制度導入のご相談などをいただいており、両立支援に向けての小さな波が広がってきていることをたいへん (うれ) しく感じています。

 決して不妊治療を特別扱いしてほしいと思っているわけではありません。不妊は表出しづらい課題であるため、ダイバーシティ&インクルージョンの中にあらかじめ「不妊」や「不妊治療」という視点を一つ足していただきたい、ということなのです。そうしたら、治療を受けたことがある(夫婦5.5組に1組)、あるいは不妊を心配したことがある(夫婦3組に1組)サイレントマジョリティーと言われている「不妊当事者」は、大変助かると思います。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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