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渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」

コラム

歯をあまり削らない虫歯治療は広がっているか

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 虫歯の治療では、感染した部位を取り除いて詰めたりかぶせたりして歯の機能を回復するわけですが、一度削った歯自体は元に戻りません。そのため、できるだけ削る範囲は小さい方がいいという考え方があります。一度治療をすると、かぶせ物と歯の隙間から虫歯が再発するリスクを抱えることになり、再治療となると、さらに歯が小さくなり、喪失に近づいてしまうからです。MI(Minimal Intervention=最小侵襲)治療と言って、20年前ごろから国際的に提唱されている考え方です。そのための“武器”になるのが、コンポジットレジンというセラミックの粒子を混ぜた樹脂。虫歯を削ってこれを 充填(じゅうてん) する治療です。

コンポジットレジンはMI治療の武器

 「大きくない虫歯はこれで治しますね。MIですから」という中堅の歯科医と最近も会いました。左の写真は、真ん中の歯が、虫歯を削った後、従来からの銀の詰め物を入れた治療です。よく見ると、下から虫歯が再発したようです。詰め物を外して、虫歯を削り取り、コンポジットレジンを充填して治療したのが右の写真です。この治療では虫歯を削った所にペースト状の材料を充填して直接口の中で形を整え、光を当てて固めます。ですから治療は1回で終わり、保険で自分の歯のように白くできます。これは再発治療の例ですが、初回の治療でも方法は同じです。

削る範囲が小さく、白い歯になり、治療は1回で終了

 どうして、コンポジットレジンの治療は削る範囲を小さくできるのでしょうか。虫歯の治療というのは、削った後で細菌が入ってこないように密閉する接着が肝心です。保険の銀歯も自費のセラミックも同じですが、歯にピッタリと接着するには、虫歯を削り取るだけではなく、歯の接着面を平らに整えなければいけません。このため虫歯に侵されていない健康な部分も削らざるを得ないのです。キーンと嫌な音を聞くだけで痛みの記憶がよみがえりそうですが、削ると痛いのは歯の健康な部分を削るためです。

 それに対して、コンポジットレジンはペースト状などの材料なので、感染した部位だけを削り取れば、歯の側がどのような形状であってもピッタリと封鎖、接着できるので、「最小侵襲」を実現できるわけです。

 削る範囲が小さくて、銀歯ではなく白い歯で治り、しかも治療は1回で終わり。「素晴らしい治療だなぁ」と思って、10年余り前に写真のような治療例を読売新聞の連載企画「医療ルネサンス」で紹介したところ、「レジンというものを使っている歯科医を紹介してほしい」という電話が会社に殺到しました。ほとんどの歯科医が使っていたはずですが、このような治療は当たり前ではなかったということなのでしょう。今は、広がってきているようですが、普及には壁がありました。

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★【完成版】しあわせの歯科医療2 300-300

渡辺勝敏(わたなべ・かつとし)
読売新聞記者(メディア局専門委員)。1985年入社。 秋田支局、金沢支局、社会部を経て97年から医療を担当。2004年に病院ごとの治療件数を一覧にした「病院の実力」、2009年に医療健康サイト「ヨミドクター」を立ち上げた。歯科については歯茎や歯根があやしくなってきた10年来、患者としても関心を持たざるを得なくなっている。立命館大学客員教授。

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