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渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」

コラム

歯をあまり削らない虫歯治療は広がっているか

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もろくて変色するという過去のイメージも

 一つはこの材料へのイメージです。50歳代の歯科医にコンポジットレジンをどう思うか尋ねると、「強度が足りないから、力がかかる歯には難しいでしょう。欠けたら苦情になりますからね。それに変色しやすいし、ごく小さな治療に使う程度の素材というのが多くの歯科医の感覚ですよ」と話していました。ベテランの歯科医にとっては弱点のある材料というイメージが強いようです。

 アメリカでかぶせ物など 補綴(ほてつ) 歯科の専門医資格を取った歯科医に同じ質問をすると、「アメリカでは、貧乏人の治療ですよ。素材としては、セラミックやジルコニアの方が優れていますから」と言い切りました。筆者は「いい治療だなぁ」と思って詰め物やかぶせ物が外れるとコンポジットレジンで治療してもらってきたので、8本の歯に使われています。「ああ、アメリカで歯科にかかったら、貧乏人扱いか」と、自分がばっさり切られたような気持ちになりました。

品質は格段に向上、若手は積極的

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 一方、コンポジットレジン治療の研究をリードする東京医科歯科大学教授の田上順次さん=写真=は、そんな歯科医たちの声をはね返してしまいます。

 「確かに以前は割れたり削れたり強度が足りませんでしたが、今は改良されて格段に強くなりました。変色は過去の話で、自分の歯と同じ色が出せます」と語ります。

 多くの歯科医と話をしていて思うのは、必ずしも最新の知識で治療をしている歯科医ばかりではないということです。「ひと通りの治療ができるようになると、勉強をやめてしまって古い知識で治療をしている先生って多いですよ」と冒頭の中堅歯科医は話していました。昔の知識で診療を続けている歯科医なら、詰め物が外れたら当たり前のようにキーンと大きく削って銀の詰め物を入れることでしょう。逆に若手には積極的に使う歯科医が増えていると言われています。

保険の価格設定は小さな修復を想定

 品質の向上とともに、小さな詰め物だけではなく、力のかかるかぶせ物にも使えるようになってきましたが、かぶせ物が外れて、近くの歯科医院に飛び込んで、「レジンで治してください」と言ったら、「うちではそういう治療はしていません」と言われることも少なくないと思います。この材料の過去のイメージだけではなく、保険での設定価格にも難しさがあるからです。

 コンポジットレジンによる修復は、歯科医院の収入として3000円(自己負担は3割)ほど。奥歯のクラウン(かぶせ物)を作ってもらったことがありますが、歯の上に材料をのせて形を整え、かみ合わせを整えるまで30分がかりでした。こんな治療を保険でやっていては割が合わないでしょう。保険は、手早くできる小さな詰め物を想定しているようです。

 一方、銀歯を使った治療では、詰め物やかぶせ物を作るのは歯科技工士ですから、初回は削って型取り、次回にできた物を接着してかみ合わせを調整する作業になり、歯科医は効率よく時間を使うことができ、診療報酬も割高になります。ただ、最近は、保険の銀歯に使う金銀パラジウム合金の材料価格が上がっているため、レジン充填を増やしているという歯科医もいます。治療方法の選択はどうしてもお金に左右される面もあります。

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★【完成版】しあわせの歯科医療2 300-300

渡辺勝敏(わたなべ・かつとし)
読売新聞記者(メディア局専門委員)。1985年入社。 秋田支局、金沢支局、社会部を経て97年から医療を担当。2004年に病院ごとの治療件数を一覧にした「病院の実力」、2009年に医療健康サイト「ヨミドクター」を立ち上げた。歯科については歯茎や歯根があやしくなってきた10年来、患者としても関心を持たざるを得なくなっている。立命館大学客員教授。

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