田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
医療におけるAIの活用に伴う社会的、倫理的課題。患者・市民、医療者が架空事例を基に議論
AIは「拡張知能」 米国医師会が声明
2018年、アメリカ医師会は「医療における拡張知能」という声明を出した。AIを人工知能「artificial intelligence」としてではなく、拡張知能「augmented intelligence」として、位置づけるというものだ。
「AI」が医療において求められること、可能なことは、「医療の自動化」ではなく、医師である人間の動作・判断の支援、人間の知能の拡張にこそ重点があるという。医師の存在がAIに置き換えられるのではなく、医師とAIとの連携でよりよいケアが達成できる、というわけだ。
アメリカ医師会の声明について井上さんは、「これまでできなかったこと、やるべきであったが放置されてきたことに取り組み、人間生活を支援していくという意味で、AIを別の言葉で読み替えつつ、医療上の位置づけを再確認する提案だと受けとめている」と話す。
仮に医療機器として承認を受けることを想定した場合、AIは承認後の学習で性質が変わってしまうことが考えられる。使用する医師、病院ごとでも違ったものに成長、変化するかもしれない。そうなると、今の医薬品、医療機器を承認する制度では対応できない面が出てくる。逆に、医療機器として承認されて定期的に管理をされるということになれば、それは果たしてAIと呼べるのかどうか、ということも言えるという。
地に足のついた議論を
研究班の報告書は、AIと医療に関する現状について、現行の制度を基礎にする限り、医療AI固有の倫理的・法的・社会的課題の影響が直ちに生じるとは考えにくく、「AIが医師の存在に代わる」「誰も理解できないAIが診断を下す」といった状況には遠いとみる。
そのうえで、1)「AI」「人工知能」という表現についての共通の理解がないため、患者・市民のみならず医療者の間でも混乱を招きうることから、実態にあった情報発信や制度上の位置づけが必要、2)医師はこれらの技術の特徴や限界を理解し、管理できなければならず、AIの判定結果が一人歩きする状況を防がねばならない。医師への教育や支援が求められる、3)市民・患者を直接対象とした「疾患予測」「リスク予測」に関するツールやプログラムが、医行為や医療機器との線引きがあいまいな形で開発・提供される可能性にも注意が必要――としている。
研究班は2018~19年度の2か年度で、来年春に最終的な報告書をまとめる。井上さんは、「AIという新しい技術・手法の登場が、患者にとって治療の選択肢を増やすという前向きな形で活用されるよう、患者・市民、ユーザーとしての医療者を交え、地に足のついた議論を進めていきたい」と話している。
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データやコミュニケーションで欠けた情報を補いながら診療行為は行われます。
一方で、高難易度のケースには積み上げられた膨大なデータや知識との付き合いに難渋しているのが多くの普通の医師や看護師の現実でしょう。
少々偏差値的に優秀な人間がトレーニングしたところで、もはや多くの人間はコンピューターに勝てません。
それは有名なコンサルタントが何年も前から指摘しているように、「知識やデータの蓄積ではもはやICチップに負ける。その中で、多くの人間はいかに稼いで生活していくか。」
その中で、コンピューターとは使い使われる関係になって行きます。
それができない人は、それができる人間と信頼関係や利害関係を築いていく必要があるだけのことです。
本文での診療拒絶の患者も、代替案をパソコンから引き出せなかった医師との信頼関係を築き損ねただけに過ぎません。
科学的合理性と習慣や文化の合理性の乖離に対して、より柔軟な説得方法やプランBやCが提示できなかっただけ。
そして、どんな医療にも間違いや不確実性があるという事実や感情への配慮の欠如。
ある面での非合理性が、別の面で合理的であるというだけの話ですけどね。
画像診断のAIも、それが優秀すぎる教師データを呑み込み過ぎた後は、その内容を普通の医師や放射線科医が理解できるかという課題があります。
医師さえ理解困難な診断治療を、普通の患者さんが必ずしも納得できるとは限りません。
自分も複雑すぎる先端医療の勉強を重ねるほどに、普通の健診や内科の手伝いの時に余計な事を考え過ぎてしまうことがあります。
患者はそれを求めていないし、自然治癒力の誤差範囲に収まる程度のことなのに。
そういう意味でも、AIやITにより医療機関や医療人、患者の在り方も含めて全てが変わっていくのだと思います。
スポーツ科学の進歩とボールの軽量化が、アマチュアも含めてサッカー選手の寿命を大幅に伸ばしたように。
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