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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

地域の医師不足解消に新提案 シニア医師のセカンドキャリアを支援

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医師が都市部に集中、深刻な地域偏在

 日本全体での医師の数は年々増えているのに、地域の医師不足は一向に解消されない。日本では医師免許があれば、どこの地域で働くかや、何の診療科を 標榜ひょうぼう するかは原則、自由であるためだ。医師が都市部に集中し、地方で不足する「医師の偏在」が生じる。

 地域の人口に医療ニーズなどの要素を加えて厚生労働省が推計した「医師偏在指標」によると、医師が最も充実している東京都と最も不足している岩手県では、約2倍の格差がある。同じ都道府県のなかでも、県庁所在地などの都市部と地方では差が大きい。

新設医大の卒業生が定年年齢に

 そんな中、あるNPO法人の発案で、ユニークな医師偏在対策の計画が進行中だ。

 名付けて「医師のセカンドキャリアと地域医療を支えるネットワーク」。都市部の病院で定年を迎えた医師の第二の人生を、地域医療のために役立ててもらおうという取り組みだ。

 呼びかけたのは、NPO法人「全世代」。地域医療機能推進機構(JCHO)理事長の尾身茂さんらが代表理事を務める。以前には医師偏在対策を提案し、地方で一定期間勤務することを将来の病院長になる要件とするなどの国の政策にも反映された“実績”もある。

 着目したのは、公立病院などで定年を迎える医師の急増が近年、見込まれること。実は、1970年代の「一県一医大構想」によって全国各地に医学部が新設され、医学部の入学定員は1学年4000人ほどから8000人程度へと倍増した。その「倍増世代」の医師が、そろそろ60~65歳の公立病院などでは定年を迎える時期になったというわけだ。

再就職の希望と病院の求人をマッチング

 定年を迎えたとは言え、医師としてはまだまだ現役。経験や知識を、医師不足に悩む地域で生かしてもらうことは、地域の医療のためにも、また医師の第二の人生のためにも有益ではないかとの構想だ。

 日本医師会、日本病院会、全日本病院協会、全国自治体病院協議会、全国国民健康保険診療施設協議会などが集って、今年初めから会合を重ね、6月に事業の概要がまとまった。

 それによると、参加団体でつくる連絡協議会が運営の主体となり、NPO法人「全世代」が事務局となって、定年後の再就職を希望する医師と病院側の求人とのマッチング業務を行う。あっせんが成立したら、病院側から成功報酬を得て運営資金とする仕組みだ。

 2020年4月の医師の就業開始を視野に、定年退職後のセカンドキャリアを検討している医師や、地方の病院の求人調査を進めたい考えだ。

多様な働き方を地域医療に活用

 医師の転職をあっせんする民間業者は、実は数多い。地方の病院は求人を出しても、なかなか医師が見つからず、慢性的な医師不足状態にある。議論の中では、いかにして、定年後に地方で働く意欲のある医師の情報を把握するか、フルタイムではなくても、趣味などを楽しみながら週2、3日勤務するといった多様な働き方も考えられる――などの意見が出された。

 医師が少ない地方では、一人の医師が幅広い患者を診ることができる「総合医」の果たす役割が大きい。それと同時に、豊富な経験と技術を持つシニアの「専門医」の存在も求められている。

 国は、専門医の養成数に都道府県別、診療科別の枠を設ける検討も始めた。先に述べた地域勤務の病院管理者要件などとも合わせ、医師の偏在解消には総合的な取り組みが重要になる。シニア医師のセカンドキャリアを支援する今回の新提案がその一助になるか、注目だ。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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専門医制度のくくりと地域医療の兼ね合い

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

僕も、結局、若くして、セカンドキャリアの状態で、地方の検診にもしばしば行きます。 日勤帯に、電車の便利なところに、様々な機能を集中させたり、遠隔...

僕も、結局、若くして、セカンドキャリアの状態で、地方の検診にもしばしば行きます。
日勤帯に、電車の便利なところに、様々な機能を集中させたり、遠隔診断や出張の交通費や宿泊費を地域なり中央政府が負担すれば、案外うまくいくのではないかと思います。
あとは、専門医制度における非常勤や地域病院の勤務履歴をどう勘案するか?

それに、医者は医者の仕事をこなすだけでなく、一社会人であり、生活者です。
若いうちに専門医を取得して、パパとママをこなすには、都会でないと無理が多いです。
医師家系の家もありますし、教育や生活のインフラやパターンとの親和性もありますし。

もう一つは、先進医療と標準医療のバランスですね。
採算の兼ね合いもあって、今でも標準医療はCT止まりのエリアも多いですが、そういう医療に慣れてしまうことは難しい事です。
未来に失業する可能性を、若者に背負わせるべきではありません。

患者や自治体もそういう医療社会の問題を知り、解決策や妥協案を実行していくべきだと思います。
専門医委員会もエンドユーザーの意向を完全に無視することもできないでしょう。

地方の手術でも裁判が起こりましたが、昔みたいに、研修医を病棟に張り付かせて、救急患者や急変患者を見せておけ・・・って、誰が得するんでしょうか?
建前と裏腹に、威張りたいだけの偉いお医者様と裁判沙汰が増えて仕事が増える弁護士です。

タスクをどれだけ日勤帯にシフトして、幸福な医療人を増やすか、地域医療も正念場だと思います。

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