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がんを語る

医療・健康・介護のコラム

肺がん(上)「人間ドック受けていたのに」「レントゲンに写らなかった」……いきなり「ステージ4」、検診の限界

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「夏風邪かな」 近所のクリニックで「すぐに精密検査を」

鈴木  東京都内で主人と2人暮らしです。17年に夏風邪みたいな症状があり、治りが悪かったので、近所の内科クリニックでCTを撮ったら、「すぐに精密検査を受けてください」と言われ、病院に紹介状を書いてもらいました。

 右上葉の 肺腺がん (注2)でしたが、反対側の肺と腰椎にも転移があって、ステージ4でした。抗がん剤治療しかなく、言われるままに治療が始まりました。私の場合はEGFR(注3)の遺伝子変異があったので、その場合に有効な分子標的治療薬を飲み出して2年弱ぐらいです。まだ、それが奏功してくれている状態です。

撮影 萩本朋子

――みなさん最初からステージ4ということですが、診断時の心境は?

長谷川  見つかった経緯としては、咳がいきなり出始めて、風邪だと思って寝ているじゃないですか。それが、どんどん具合が悪くなって、普通は寝れば治るはずなのに、そうじゃなかった。最初のころは何かもうろうとして、意思決定ができなかった記憶がありますね。告知を受けたときのことも、今覚えているのは「治らない」と告げられたのと、自分がその診察室を出ていくような姿を、なぜか廊下の向こう側から自分が見ているみたいな、そういうぼんやりした感覚が記憶に残っています。

横になると、苦しくて寝られなかった

――自分のことなのに、人ごとのように?

長谷川  そうですね。記憶としては。あと、肺がんって悪くなると、横に寝られなくなります。呼吸が苦しくなってしまうので。肺がんの診断がつくまでは、「斜めに寝るといいですよ」とか、誰も教えてくれない。だから僕は、横になると苦しくて寝られず、具合も悪くて、もう八方ふさがりでしたね。しかも「がんじゃないのかな」と不安に襲われながら……。

 診断を受けた後は、「分子標的治療薬が効く遺伝子変異があれば延命できる。なければ一体どうなるのか? もう、この病院から出られないのでは」と不安に襲われた覚えはありますね。

 でも、先生方はすごく 真摯(しんし) に向き合ってくださって、何でもちゃんと答えてくれて、検査も非常に速いペースでしてくれました。先生方も急がなきゃいけないと思っていたんですね。自分としては、今話していても整理がつかないぐらい、グチャグチャな状況でした。

 それに、原因探しをしてしまいます。例えば、僕はたばこを吸っていなかったので、「何で肺がんなのか」と思いますよね。今度は妻が、「私が小言を言ったせいじゃないか」とか、「何かストレスを与えたんじゃないか」とか考えてしまう。私は肺腺がんですが、腺がんって自覚症状がありません。妻は「何で私がもっと早く、夫の異常を気づけなかったのだろう」と、自分を責めることもあったようです。

「なんで2回もがんに」

田中  私も本当にショックで、信じられなかったですね。娘を短大に送り出して、これからというときに、胃がんに続いて、なんで2回もがんになるんだろうって。

――やはり原因探しのようなことを?

田中  そうですね。たばこは吸っていませんし……。その病院で毎年人間ドックを受けていて、半年前にも受けたばかりなのに、なぜ見つからなかったのかと、家族全員がそう言っていました。それからやっぱり、妻も「ストレスじゃないか」とか、「仕事柄、勤務が不規則だったせいじゃないか」とか、原因を求めてしまうようなこともありました。

 診断後、泣きながら、すぐ自分の荷物整理を始めました。当時調べたステージ4の5年生存率ってとても低かったので、「ああ、本当に死ぬのかな」っていう気持ちでした。恐怖というか、本当に悔しくて無念で……。両親にどう話すかでも悩みました。僕は3人きょうだいですが、妹を乳がんで亡くしていて、長男の僕までステージ4の肺がん。結局、ステージは親には言わず、「ちょっと肺がんになった。治療は継続しないといけない」というようなことだけを伝えています。

鈴木  私もしばらくの間、自分のこととは思えなかったです。たまたま告知を受けたのと同時期に義父が危篤になり、夫は大変な状況に置かれました。お葬式があるので夫は実家に帰り、私はもうパニくっていて「ちょっと具合が悪い」とか理由をつけて自宅待機し、夫が全部終えて帰ってきてから、「どうしようか」という話になりました。

気持ちが落ち込んで「死んでしまいたい」と

――しばらく、現実と思えなかったんですね。

鈴木  実は私は元看護師で、家族や親の健康管理は自分がやってきたつもりなんですが、その自分がこんなことになり、一時期すごく気持ちが落ち込んで、「死んでしまいたい」と思いました。生きたいから「困った、困った」ともがく一方で、そこから逃れたいという心境だったのだと思います。

 そういう中で、「いつまでもそんな状態じゃ良くない」「闘わなきゃ」って思い始めたんですよね。それで勇気を出して、みんなはどんな感じで闘っているのかなと思って、ワンステップの活動に参加するようになりました。参加するたびに皆さんのパワーをもらって、充電してくるような感覚です。

――看護師の仕事はいつまで?

鈴木  十数年前まで病院で働いていました。子供もいないし、また復職しようかなと思っていたところで病気になりました。体力に自信がなく、今の段階では復職は考えられないですね。仕事柄、がんなどになった人をサポートする仕事をしていたので、自分がてんてこまいになっている状況を、すごく冷静に見ているもう一人の自分もいて、「そうじゃないでしょう」とか、「もっと頑張らなきゃいけない」と励ましてくれたりします。

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男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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