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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと

コラム

ミラーニューロンの働きで、ときめきを取り戻す

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 「年をとると感情の起伏に乏しくなる」と一般に思われていますが、決してそうではないという研究報告が出ています。京都大学霊長類研究所の正高信男教授の発表によると、シワやたるみなどの顔面の形態的加齢変化が災いして、若い時と同じような強度の表情が表出できないため、感情の起伏が乏しくなる印象を与えるのだと言います。

ワクワク感は減ってきたが……

 なるほどという知見ではありますが、自分の経験から申し上げると、衰えとは言わなくとも、感じ方は変わってきているように思います。まず、五感が鈍くなる。視覚、聴覚、嗅覚の衰えは誰でも認めるところです。味覚、触覚も同様でしょう。つまり外からの刺激の感じ方が多少は薄まっているのではないでしょうか。そしてそれを受け止める脳の働き、感受性はどうでしょうか。衰えたとは思いたくありませんが、質的には変わってきたと感じます。

 やはり若い時ほどの感激性は衰えると認めざるを得ません。昔、夢中になって読んだ本を今読み返すと、昔この内容を本当に理解できたのかと (いぶか) しく思う反面、かつての感激を取り戻すことができず、がっかりすることはないでしょうか。また、男はアウトドアライフが好きですが、昔ほどキャンプファイアを見ても血が騒がなくなったとか。若い時ほどのワクワク感が減ってきた嘆きです。

ミラーニューロンの働きで気持ちを高める

 そのワクワク感を「ときめき」と表現される方もおられます。一昨年105歳でお亡くなりになった医師の日野原重明さんもそのお一人でした。数年前にお会いしたときに言われました。

 「塩谷さん、ねぇ。男は年をとったらおしゃれしなきゃ。僕なんか、ポッケには赤いハンカチを忘れないよ。ほらっ」と真紅のハンカチーフを見せてくださいました。赤い色で異性に対するときめきを高め、また、その異性が自分をワクワクさせてくれるというプラスの循環を作り出すのだそうです。「ミラーニューロン」の活用ですね。ミラーニューロンというのは、他者が手を動かすのを見ていると、こちらの脳も手を動かす神経が鏡のように反応する働きで、「共感」の解明という観点からも研究されています。

微笑みを浮かべると、相手の表情もやわらぐ

 海外旅行の際の経験ですが、いろいろなホテルに泊まる際、まずフロントでチェックインをします。彼ら彼女らはプロですから、決してこちらに不愉快な思いはさせません。ですが、時折、その対応が何かよそよそしいと感じることがあります。気がついたのは、そういう時はこちらの顔がこわばっているということです。海外旅行なので時差ぼけはあるし、初めての街で不安や緊張もある、このホテルの居心地はどうか、など気がかりいっぱいで、スマイルどころか怖い顔をしているのかもしれません。

 それに気づいてから、まず自分の顔をリラックスさせて話しかけるようにすると、具体的には特に上顎のあたりを緩めるのですが、相手も和やかに対応してくれることがわかりました。 微笑(ほほえ) みを作って気がついたことは、微笑みはその当人の気持ちを明るくし、しかもその微笑みを見た人も反射的に微笑みを浮かべてしまうということです。この後者の脳の働きは、ミラーニューロンの働きとされています。

大切なのは感情を素直に表情で表すこと

 年をとると、シワやたるみのため感情が乏しい印象を与えると最初に触れました。とすると、ミラーニューロンの働きで、人と接していてもお互いに感情が平板になりがちかもしれません。日野原先生は、赤いハンカチでそれを逆転させて気持ちを盛り上げていたというわけです。

 心のアンチエイジングとは、ワクワク感を取り戻すことです。 年甲斐(としがい) もないとか、はしたないとか考えずに、素直に好奇心を、異性に対するそれ含めて、 () き立てる。その感情を素直に表情として 吐露(とろ) するように心がけましょう。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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1件 のコメント

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共鳴する脳とピクチャーのファンタジスタ

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

慣れや疲れ、加齢が人から感動を奪ったり、難易度を高くします。 指導に復帰して1年弱の医学部サッカー部の部員たちも3割くらいはサッカーの本質を分か...

慣れや疲れ、加齢が人から感動を奪ったり、難易度を高くします。
指導に復帰して1年弱の医学部サッカー部の部員たちも3割くらいはサッカーの本質を分かり、良い目をしています。

そんなものが医療の役に立つわけがない、時間の無駄だと言われそうですが、こんな生き生きとした瞬間が医療の役に立たないはずがないと僕は思っています。

機会平等の原則は守りつつも、一生懸命な奴や素質のある奴には、色々と教えてしまいます。
普通の人が見えない絵を見る、見つける。
ファンタジスタと呼ばれる選手たちの絵の見つけ方、書き方、
わからない人からしたら、おそらく、初めて英語を聴くようなものではないかと思います。

世の中には常識があって、非常識もあります。
けれども、非常識の中には人生を楽しく生きるヒントがあります。
プロサッカー選手よりうまい医学生とか、プロ監督よりプレーや指導をわかってる医者とか非常識ですよね。
でも、社会を、社会を構成する個々人を幸せにするのであれば、否定されるものでもありません。

年のせいか、自分のプレーだけでなく、弟子のファインプレーも嬉しくなってきました。
ヤン提督ではありませんが、人類だけが、遺伝子の他に、文字と歴史を持っています。
そういう感覚や感動の共有こそが、あるいは人類ならではの喜びかもしれませんね。
毎日の義務や仕事に追われる中で失っている感動や喜び、あるいは令和時代の働き方改革の軸かもしれません。
いつの日か、弟子や孫弟子の医学生から、サッカー日本代表を出せますように。

達成不可能に近い目標だからこそ面白いですね。
自分も半分現役復帰したので、何らかの試合は目指したいと思います。
18歳やそこらの子供に負けない気持ちもまた生きる原動力です。
仮にそれが事実でなくても、事実にしようとする気持ちが大事ですし、社会を形作るものと信じたいですね。

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