石蔵文信の「男と女の楽しい更年期!」
医療・健康・介護のコラム
名刺と肩書がないと会話できない男たち 定年後も「部長の振る舞い」で居場所なくし…
組織に属して働いているサラリーマンはほとんど名刺や肩書をお持ちのはずです。もちろん自営業の方でも多くの方がお持ちだと思います。案外、われわれ医師は、名刺を持っていないことが多いのです。今でこそ、私は名刺を持ち歩いていますが、若い頃はあまりその必要性を感じなかったので、わざわざ作りませんでした。
副院長だけでサッカーチームが作れる病院も
組織に所属すると、その肩書がものを言って、肩書で相手の対応も変わります。医師の場合も、医員、医長、副部長、部長、副院長、院長のように昇進するにしたがって肩書が付きますが、それを気にする医師は少ないでしょう。ある程度の年になれば部長くらいにはなりますが、それでも時には部下がいなかったりします。ある病院では、副院長だけでサッカーチームが作れるというほどの大盤振る舞いをしていますので、肩書にこだわる医師はそれほど多くはないようです。
しかし、上意下達を重んじるサラリーマンにとっては、一つ肩書が上がるか下がるかは大きな問題でしょう。当然給料にも差が出ますので、出世競争は激化するでしょう。「それが妻子のため」と思って働き過ぎ、結局、家族から総スカンを食っていたら、何のために頑張ってきたのかわかりません。
家族のため、会社のために一生懸命に働いてきたにもかかわらず、50代後半には役職定年となり、60歳でいったん退職した後に再雇用になりますが、会社から見れば「終わった人」なのかもしれません。権限もなくなり、給与も減りますが、会社の一員なので名刺は作れます。会社も体面を気にして「参与」などの役職をくれますが、ほとんどはお飾りです。
肩書がないと落ち着かない
いよいよ退職となれば、お飾りの肩書も返上しなくてはなりません。肩書がないと名刺のカッコがつかないからと、作らない方もおられます。肩書なしで、氏名と住所・連絡先を刷った名刺を作る人もいます。大学の教授なら「名誉教授」という無給の称号をいただけるので、名刺に書くことはできます。大会社の幹部として貢献した人には「顧問」という名称と給料を出す場合もありますが、最近、このようなOBの扱いにもメスが入りつつあります。
定年問題を考えてきた私は、かつて「定年後は名刺や肩書のない生活を楽しみましょう!」という啓発活動をしていましたが、全く反応がありませんでした。今まで、良くも悪くも組織の一員として活動してきたので、どうも肩書がないと落ち着かないし、相手との会話も始まらないようなのです。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。