子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
食物アレルギー(12)生の果物、野菜で発症
このシリーズでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センター副臨床研究センター長の海老沢元宏さん(59)に聞きました。(聞き手・矢沢寛茂)
生の果物や野菜を食べると、唇や口の中、耳の奥などが腫れて、かゆくなったり、痛くなったりすることがあります。食物アレルギーの一つの「口腔アレルギー症候群(OAS)」の可能性があります。
13歳の中学1年生の女子は、ある時から、リンゴやモモ、生野菜のサラダなどを食べると、5分ほどで口の中にピリピリした感覚を訴えるようになりました。口にできない品目は徐々に増えましたが、缶詰やジャムなど加工処理後のものは問題がありません。専門医を受診すると、OASと診断されました。
彼女は7歳の頃から、スギやシラカバなどの花粉症(アレルギー性鼻炎)があり、医師から「関係があるかもしれない」と言われました。生の果物や野菜に含まれるたんぱく質は、花粉のたんぱく質と構造が似ており、アレルギーを起こすことがあるのです。発症のおそれがある品目の一覧を渡され、それ以外でも、異変を感じたら食べないようにとの指導を受けました。
OASは幼少期以降、年齢が上がるほど発症が多くなり、花粉症との関連がわかれば「花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)」と診断されます。最近は、若い世代を中心に増加傾向にあります。
12回にわたって、様々な食物アレルギーの解説をしてきました。食物アレルギーは日常生活に密接に関連したアレルギー疾患で、患者さんだけではなく、周囲の多くの方の正しい理解が大切です。読者の皆さんの食物アレルギーに関する理解に役立ったことを期待して連載を終わりたいと思います。半年の間、ありがとうございました。
【略歴】
海老沢元宏(えびさわ・もとひろ)
小児科医、アレルギー専門医。東京慈恵医大卒。最新情報を発信する「食物アレルギー研究会」の世話人代表。
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