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訪問診療にできること~最期まで人生を楽しく生き切る~ 佐々木淳

医療・健康・介護のコラム

余命1か月と宣告された88歳、認知症の女性、薬剤の見直しで11年生きた

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薬が認知症などを悪化させる可能性も

 典型的な「せん妄」のケースです。

 「せん妄」とは、もともと病気がある人、または体調がよくない人に、何らかのストレスがかかった時に起こる精神的な混乱の一つです。人によっては幻覚が見えたり、興奮したり、意思の疎通が難しくなったりします。

 特に高齢者の場合、入院に伴う環境変化だけで1~3割の人がせん妄を起こすといわれています。薬物の投与に伴う、せん妄もよく知られています。そして、このせん妄を誘発している原因を放置すると、心身の機能が急速に低下していきます。

 彼女は入院を契機にせん妄を発症し、薬物によりそれが増強されました。その結果、寝たきりになり、認知症が悪化したように見えていたのです。

 海外の研究によると、認知機能障害と診断されている高齢者の11.4%に薬剤の影響が認められ、3.2%は薬剤が原因の認知症だとされています。また、回復可能な認知症のうち18.5%は薬剤によるものであったという報告もあります。

 アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、認知症の原因疾患を治療するための薬(抗認知症薬)についても、人によっては興奮しやすくなったり、元気がなくなったり、認知症の症状を悪化させるケースがあることもわかってきました。

 もちろん、薬は病気を治療するための重要な武器です。しかし、薬は常に 諸刃(もろは) の剣。安全な薬などない、薬が寝たきりを作る、認知症などの症状を悪化させる可能性があるのだ、ということについても十分に留意しておく必要があると思います。

 せん妄を起こしやすい薬についても、知っておくとよいと思います。よく使われている薬の一部をご紹介します。中には薬局で直接購入できるものもあります。

(1) 睡眠薬・抗不安薬
(2) その他の精神科の薬(抗不安薬・抗精神病薬・抗うつ薬)
(3) 抗コリン薬(アレルギーや過活動ぼうこう=頻尿=の薬の一部)
(4) H2ブロッカー(制酸剤の一部)
(5) 降圧薬・不整脈の薬の一部
(6) ステロイド

 これらの薬は認知症の悪化だけではなく、転倒や誤嚥のリスクを高め、食欲を低下させるなどの共通の傾向があります。治療のために必要なものは副作用に十分気を付けながら使いましょう。そして、必要性の低いものは、なるべく早めに中止するようにしましょう。

 もっと詳しく知りたい方は、日本老年医学会が取りまとめた「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を読んでみてください。無料でPDFをダウンロードすることができます。

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf

(佐々木淳 訪問診療医)

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sasaki-jun_prof

佐々木淳(ささき・じゅん)

 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。1973年生まれ。筑波大医学専門学群卒。三井記念病院内科、消化器内科で勤務。井口病院(東京・足立区)副院長、金町中央病院(同・葛飾区)透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック(在宅療養支援診療所)設立。2008年、団体名を悠翔会に改称。首都圏12か所で在宅療養支援診療所を運営する。

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1件 のコメント

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認知症とせん妄

ケアマネ.ジュン

記事を読んでいてそうだそうだ、こんな医師が身近にいるといいなぁと思っていたら東京の佐々木先生でした。あ〜やはりそうだ!と納得。 誤嚥性肺炎、絶食...

記事を読んでいてそうだそうだ、こんな医師が身近にいるといいなぁと思っていたら東京の佐々木先生でした。あ〜やはりそうだ!と納得。
誤嚥性肺炎、絶食、点滴、点滴の針を抜くから身体拘束、薬漬け、食事が食べられなくなる、どんどん状態が悪化する、やがて余命宣告。もういい加減医療職看護職介護職は気付こうよ!作られた余命宣告の残酷さに!!

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