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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

認知症介護の極意は「逃げ恥」? 大切なのは、生き抜くこと!

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責任を持って逃げるべし

  介護を仕事としている人ならば、勤務が終われば自分の生活に戻れます。でも家族にとっては「介護の現場=自分の家」なわけで、逃げ場がありません。どんなに苦しくても、簡単には関係を切り離すことができないからこそ、追い詰められてしまいます。そんなときは、認知症の人や家からとにかく離れるのが、最善の方法という場合があるのです。

 だからといって、介護が必要な人に対して何もしないで逃げるのは、大問題! ケアマネジャーをはじめ介護のプロたちに相談し、彼らの手を上手に借りて、盤石の構えをとった後に逃げ出すのです。

 私と母さんは、ゲームなどを楽しみながら日中を過ごすデイサービスやデイケア、施設に宿泊するショートステイなどのサービスを組み合わせて、しばし介護から逃げます。介護歴も20年を超えると、私も母さんも「次に父さんがショートステイに行っているときに、友達に会おう!」なとど、責任感を持って逃げることがすっかり上手になりました。

父さんにも優しくなれる

 今でこそ、「介護から逃げよう!」なとど言っている私ですが、最初のうちは、父さんの介護を人に任せて自分の好きなことをするのに大きな罪悪感がありました。近所のマダムから、「あら~、お父さんを施設に預けてお出掛け?(介護経験のない人ほど、イヤミっぽく言ってくる気が……)」なんて言われたりして、周りの無責任な声にも悩まされました。

 人にもよると思いますが、父さんは家でじっとしているよりも、さまざまなアクティビティーがあるデイサービスに行くことを楽しみにしています。その間に私と母さんが疲れた心身を思いっきりリフレッシュすれば、心に余裕が戻り、帰宅した父さんにも優しくなれます。

現場から離れてリフレッシュ

  私の経験上、余裕を失っているときほど、逃げることに罪悪感を持ってしまいがちです。なぜなら、余裕がないと「自分が逃げても問題ないように、人の手を借りる」という発想すら浮かばないからです。

 私は、「そんな時こそ、腹をくくって徹底的に逃げまくって、疲れた心身を癒やそう!」と、声を大にして言いたいのです。そして、ただ休むのではなく、家から文字通り「逃走」し、介護の空間から離れることを強くオススメします。だって、リフレッシュしたいときに介護グッズが目に入ったら、介護のことを思い出してしまって全く気が休まらないじゃないですか。

 もしも介護している人が倒れてしまったら、介護されている人の命にも関わります。私と母さんは、自分たちと父さんのために逃げているのです。

平匡さんの言う通り

 最近は朝夕にデイサービスの送迎車が街を行き交うようになり、世間的にも介護サービスがかなり認知されてきました。つい先日も知り合いから「今日はお父さん、デイサービス? いないうちにガス抜きしないとね」と、こちら側が驚いてしまうようなことを言われました。わかる人にはわかってもらえていると思うと、心強いです。

 あのドラマでも、星野さんが演じる 平匡(ひらまさ) さんがこんなことを言っていました。

 「逃げるのは恥。だけど役に立つ。後ろ向きな選択だっていいじゃないか。恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことの方が大切で、その点においては異論も反論も認めない」

 コレ、介護においても同じことが言えませんか?(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介は こちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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1件 のコメント

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寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

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災害時や事故時の対応にも似てますね。
そういう意味でも、子供が自立するまで親を支える保育園とか義務教育施設、あるいは介護施設の重要性が再認識されます。

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