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陽子のシネマ・クローゼット

コラム

平均年齢83歳のダンスグループに若者が大喝采!…『はじまりはヒップホップ』

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平均年齢83歳のダンスグループに若者が大喝さい!…『はじまりはヒップホップ』

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

公民館からラスベガスの世界大会へ

 ニュージーランド最大の都市オークランドからフェリーで東に35分ほど。「オークランドの宝石」と呼ばれるワイヘキは、人口約8,000人の小さな美しい島だ。『はじまりはヒップホップ』(2014年)は、のどかな島の公民館で誕生した、世界最高齢のヒップホップダンスチームの大いなる挑戦を追ったドキュメンタリー映画である。

 チームの若き女性マネジャー、ビリー・ジョーダンは、クライストチャーチ市議会で働いていた2011年、大地震で命の危機に直面したのをきっかけに、ワイヘキ島に移住。日本のデイサービスのように、公民館に集まる高齢者たちの世話人になった。

 「ここでの一番の目的は、お年寄りに大冒険をさせること」というビリーは、ある日、今年の目標は、ラスベガスで開催されるヒップホップダンスの世界大会に全員で出演することだと彼らに告げた。拍手と歓声が上がり、さっそく練習がスタートする。

 クルー(チーム)の名は、「ヒップ・オペレーション」。メンバーの多くが腰骨(ヒップ)の手術(オペレーション)を受けているのが由来。振り付けも担当するビリーだが、実はヒップホップダンスの経験はなく、YouTubeや本が頼り。平均年齢83歳のメンバーは、なじみのないヒップホップの音楽やダンスの動きに四苦八苦しながらも、ビリーの思いに応えようと奮闘する。

一人ひとりに人生ドラマ

 映画では、メンバーそれぞれが歩んで来た人生の道のりにもカメラが向けられる。

 膝の関節炎に悩まされ、「昔のようには踊れないが、ヒップホップの動きはすごく好き」と語るのは、ピアノが得意なカーラ・ネルソン(当時94歳)だ。英国・マンチェスター生まれで、ワイヘキ島で出会った夫と45歳で結婚した。夫はすでに他界、かつて米国の核戦略に反対する活動に打ち込んだ勇敢な女性でもあるカーラは、一人になっても、自ら外へ出て人々と交流したい、特に若者とつながりたいと、ポジティブ思考。

 チームのスターダンサーのメイニー・トンプソン(同94歳)は、シングルマザーとして5人の子供たちを育てたスーパーウーマン。米国のベトナム戦争に反対するデモに、500人を率いて参加するというリーダーシップの持ち主で、ビリーとは、恋バナもする仲。

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 ローズマリー・マッケンジー(同73歳)は視力を失いかけているが、好奇心旺盛。「目がほとんど見えないからこそ、障害のある人に伝えたいの。誰にも遠慮せず外へ出て行くべきだとね」と積極的に出かける。ロンドン生まれのテリー・ウールモア=グッドウィン(同93歳)は、初恋のビルと結婚して70年以上がたつ。認知症を患い施設に入った夫を見舞う日々。愛する夫と一緒に天に召されるため、安楽死を真剣に検討したことも明かす。「マイケル・ジャクソンが股間を持った時、不快に感じたけど今じゃ私もやるわ」というユーモアは、さすがクルーの一員だ。

 この映画が多くの世代を感動させたのは、老人がヒップホップダンスを踊るからだけではない。夢に挑戦する原動力となる、彼ら一人ひとりのこれまでの人生ドラマに光を当て、老い、そして生と死を掘り下げているからではないか。

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ogawa_yoko_prof

小川陽子(おがわ・ようこ)
 東京生まれ。日本医学ジャーナリスト協会副会長。国際医療福祉大学大学院医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。医療ジャーナリスト、医療映画エッセイストとして活動。“シニアによるヒップホップダンスへの挑戦”というテーマで話題になったドキュメンタリー映画『はじまりはヒップホップ』(2016年日本公開)のメンバー(平均年齢83歳)を日本に招き、湖山医療福祉グループ・カメリア会の特別養護老人ホームで交流イベントを行うなど、映画のイベントプロデュースも手がける。高齢者住宅新聞で、「ヘルスケア×カルチャー 変貌する医療と福祉」連載中。 

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