産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
嫌いな人は自分の鏡
理屈は納得、感情は反発……3回目の面談
夏目: わかってくれましたか。
恵子さん: 理屈は分かりますが、気持ちは反発して。
夏目: そうですね。
恵子さん: でも、楽になるのであれば、そう考えてみます。
夏目: まとめますと「嫌いな自分(影)」は抑圧され、「無意識の世界」に存在していますが、美江さんの言動に刺激されて動き出します。美江さんと接触すればするほど、「嫌いな自分」を「鏡」で長時間、見ることになります。しんどいでしょう。
恵子さん: 「私の嫌いな自分」を美江さんが持っているのね。
夏目: そういうことです。理解していただき、 嬉 しいです。よく「嫌いな人は、自分の鏡」と言います。
恵子さん: 「鏡」は実感できます。でも、彼女が私を嫌っている説明にはならないですよね。
夏目: 恵子さんは、美江さんを嫌っていると思われたくありませんよね。周囲が気づけば、自分の知られたくない面が、わかってしまうかもしれません。それは避けたいですね。
「心の防衛作用」の働きで
恵子さん: それで……。
夏目: 自分を守るために、無意識の働きで、「美江さんが私を嫌っている」と逆転した受け止め方をしているのです。「自我防衛メカニズム」と言います。無意識の働きなので、あなたにはわかりません。
<理解する時間を取りながら>
恵子さん: そうか、自分を守っていたんだ。「美江さんは私を嫌っていない」っていう仲間の意見が正しかった。「独り相撲」を取っていたのですか?
夏目: そうです。
恵子さん: 理屈ですね。でも、私なりに理解できて楽になれたから、それでOKです。
<恵子さんの表情が明るくなっています>
恵子さん: 人の好き嫌いがありますが、嫌いな人はいつも「自分の鏡」なんですか。
夏目: すべてではありません。対人関係には様々な要因がありますから。ざっくり、経験から言えば対象が3、4人いたら、そのうち1人くらいかなぁ。
無理して明るくふるまわなくてもいい
恵子さんは3か月後に、ふらりと産業医の部屋を訪れました。「気づいていなかった、嫌いな自分がわかって、良かったです」と言いました。そして、「無理して明るく装うことや笑顔づくりもやめました、少しずつ」と語っていました。
私はカウンセリングの目的に達したと判断しました。恵子さんが、無理をして明るい自分を演じていることに気づいてくれたからです。
恵子さんは上手くいったケースで、経験から言えば、4割ぐらいの方は、こうしたカウンセリングで生きやすくなっていきます。

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嫌いな人は、自分のかがみ
あられ
嫌いな人は、自分の鏡って、マジにそうかもしれないって思いました。自分は、自分と同じなんだと思ったら、楽になりました。
嫌いな人は、自分の鏡って、マジにそうかもしれないって思いました。自分は、自分と同じなんだと思ったら、楽になりました。
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