Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
心配事は解決したのに眠れない「慢性不眠症」 早寝、長寝の心がけは逆効果です!
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。
誰しも一度や二度は、眠れぬ夜を過ごしたことがあるはず。でも、心配事が解決すれば、いつの間にか元通り眠れるようになりましたよね。ところが、何かしらの理由で不眠が一定期間以上続いてしまうと、原因が解決してもなかなか不眠が消えず、慢性不眠症に陥ってしまうことが多いのです。このように、不眠が「一人歩き」を始めてしまうのは、なぜなのでしょうか? 実は、私たちの体内と行動に、ある変化が生じているからなのです。
人間には復元力がある
「暑くて寝苦しい」「 痒 みや痛みがある」「仕事や家庭内の心配事がある」など様々な原因から、 悶々 として眠れなかった経験をお持ちの読者の方も多いと思います。海外旅行の時の時差ボケや出張先で枕が変わったことで、不眠を経験することもあります。多くの場合、そのような不眠は一過性です。原因が解決すれば、いつの間にか再び眠れるようになるのが大半です。
これは、人間が持つレジリアンス(快復力、復元力)のおかげです。特に睡眠は生命の維持にとって大事な生体機能であるため、睡眠時間を一定に保とうとする力(睡眠恒常性と呼びます)が強く働き、よほどのことがないと睡眠障害は持続しません。例えば、私たちが厚生労働省の委託を受け、東日本大震災の後に行った調査では、被災の中心地である東北6県の住民の方々のうち、震災直後に一過性(数日~数週間)の不眠状態に陥った人は6割にも達しましたが、数か月後になると大部分の人は不眠が解消していました。
うつ病が治っても不眠が残ることも
ところが、震災までいかなくとも、強いストレスによって不眠が長引いた場合、一部の人では、その原因が取り除かれても不眠だけが残存し、慢性不眠症に陥ってしまうことがあります。例えば、以前に取り上げた うつ病 も、その典型例です。うつ病では、抑うつ気分や意欲低下、食欲不振などと並び、不眠は代表的な症状です。うつ病が改善すると多くの症状が一緒に治りますが、不眠はうつ病が寛解した後も残ってしまうことが非常に多いのです(残遺不眠と呼ばれます)。
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休息や睡眠時間もやり方次第ですよね。 そして、スポーツではないですが、社会人や学生としてはよっぽどひどくない限り、だましだましやっていく必要があ...
休息や睡眠時間もやり方次第ですよね。
そして、スポーツではないですが、社会人や学生としてはよっぽどひどくない限り、だましだましやっていく必要があります。
その分水嶺や、修正のかけ方も技術ですね。
一方で、不眠の中には身体疾患に起因するようなものもあり、心身両面のアプローチが必要なのではないかと思います。
続編に期待します。
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