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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

コラム

心配事は解決したのに眠れない「慢性不眠症」 早寝、長寝の心がけは逆効果です!

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身体機能の変化と誤った睡眠習慣が

 不眠が長引いている人の心身には、どのような変化が生じているのでしょうか? 

 第一に、体内で睡眠の質を低下させる特殊な変化が生じます。例えば、本来は夜間に下がるべき深部体温(脳や内臓の温度)、副腎皮質ホルモン、代謝、感覚刺激に対する反応性などが高止まりしてしまいます。これらの身体機能の変化のために、心配事が解決して精神面ではホッとしても、体の方は目覚めやすい状態が持続します。そのため、以前と同じ時刻に寝床に入っても眠気が来ず、また夜間の中途覚醒や早朝覚醒もさっぱり改善しないのです。

 第二に、私たちの行動面にもある変化が表れます。その変化とは、「早寝、長寝、昼寝」などの誤った睡眠習慣です。きっかけとなった心配事が解決したにも関わらず不眠が長引くと、今度は眠れないこと自体が不安の原因になります。慢性不眠症に陥る方は、心配性、神経質、几帳面、不安やこだわりが強い、などの性格傾向が強いことが知られています。そのため、いったん不眠で悩み始めると、それが頭から離れなくなり、睡眠に関する書籍やネット情報、寝具や快眠グッズなどに凝るなど、眠るための様々な取り組みを始めるのです。

 先に挙げた「早寝、長寝、昼寝」の就床パターンも、それらの取り組みの一つです。少しでも睡眠時間を稼ぐために、以前よりも早めに床に入る、長く寝床にしがみつく、睡眠不足を挽回するために長い昼寝をする、などの「工夫」をするのですが、この一つ一つが不眠症を更に悪化させてしまいます。早寝のデメリットについては、前回のコラム『 「睡眠薬を飲んでも眠れない」は服用時刻に問題あり!?…「腕時計」よりも「体内時計」に従って 』でも紹介しました。

「横になっているだけでも体が休まる」は禁句

 このように、いったん長引く不眠を経験すると、身体内部の変化に加えて、誤った睡眠習慣を始めるなど行動面の変化も生じるため、ますます不眠が悪化します。不眠を「こじらせる」前に、例えば、1か月以上も不眠が続くようであれば、かかりつけ医に相談してください。今回は一般的な不眠症の話題でしたが、不眠が持続する原因は様々で、先に触れたうつ病のほか、薬剤の副作用、睡眠時無呼吸症候群など不眠症以外の睡眠障害もあります。かかりつけ医への相談をお勧めするのは、不眠の原因を診立てる必要があるからです。

 私が研修医だった30年ほど前は、不眠症で悩む患者さんには「横になっているだけでも体が休まる」から、「眠気が来るまで部屋を暗くして静かに横になってください」と指導するように教科書にも書いてありました。ところが、現在の不眠治療の教科書では、「横になっているだけでも体が休まる」は禁句とされています。むしろ強い眠気が来るまで「夜更かし」をすることが勧められています。その意味とは?

 次回は、「夜更かし」の効用を解説するとともに、不眠に悩む方にお勧めの睡眠習慣をご紹介します。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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1件 のコメント

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うまくいかない時間も含めて生活を創る

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

休息や睡眠時間もやり方次第ですよね。 そして、スポーツではないですが、社会人や学生としてはよっぽどひどくない限り、だましだましやっていく必要があ...

休息や睡眠時間もやり方次第ですよね。

そして、スポーツではないですが、社会人や学生としてはよっぽどひどくない限り、だましだましやっていく必要があります。

その分水嶺や、修正のかけ方も技術ですね。

一方で、不眠の中には身体疾患に起因するようなものもあり、心身両面のアプローチが必要なのではないかと思います。
続編に期待します。

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