子どもの健康を考える「子なび」
コラム
食物アレルギー(11)食後の激しい運動 誘発も
このシリーズでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センター副臨床研究センター長の海老沢元宏さん(59)に聞きます。(聞き手・矢沢寛茂)
食物アレルギーは、原因となる食品を食べるとすぐに症状が出る即時型のアレルギーだけではありません。食後の運動が引き金となって重いアレルギー症状を起こす「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」というケースもあります。
13歳の男子中学生は、給食を食べた後、体育の授業でサッカーをしているとだんだん息苦しくなり、続いて口の周りが赤く腫れ、手足にもじんましんが出てきました。保健室に行くと、養護教諭の判断ですぐに病院に運ばれ、注射などの治療を受け、間もなく症状が収まりました。
それまでは、彼は食物アレルギーと診断されたことがありませんでした。問診や検査の結果、パンを食べた後に激しい運動をしたため、FDEIAを起こしたと診断されました。原因となる小麦を含む食べ物を食べただけではアレルギー症状は出ていませんでしたが、激しい運動が加わり、誘発されたのです。
10~20歳代での発症が多く、中学生なら6000人に1人の割合で発症する可能性があります。原因となる食品は、小麦が約6割と最も多く、次いでエビやカニなど甲殻類が3割弱を占めます。最近では果物や野菜が原因になったり、食品の組み合わせによって発症したり、といった報告も増えています。
食後約2時間以内にサッカーなどの球技や、マラソンのような激しい運動をすると起きやすいようです。入浴や歩いただけで発症したり、鎮痛剤などを服用して体調が急変したりすることもあります。
発症や再発を防ぐ方法は、まだよく分かっていません。▽運動前に原因となる食品を食べない▽食べたら最低2時間は運動を避ける▽少しでも異変を感じたら安静にし、治療を受ける――といった注意が必要です。
【略歴】
海老沢元宏(えびさわ・もとひろ)
小児科医、アレルギー専門医。東京慈恵医大卒。最新情報を発信する「食物アレルギー研究会」の世話人代表。
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