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ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』

介護・シニア

ストレスで寝ながら食いしばり、奥歯が粉々に…同居家族の負担を減らすには

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「施設に入れたら?」と言われても

 父のトラブルや日常の見守りにかかる身体的負担。そして、生活費を稼がないといけないのに、介護のため仕事のペースを落とさざるを得ないなど、様々なストレスが、知らず知らずのうちに、体を (むしば) んでいるのだろう。

 父を施設に入れたら、という声もあったが、実際には難しい問題があった。父は要介護2だが、特別養護老人ホームの入居は要介護3からであり、うちの地区では数百人待ちだそう。有料老人ホームは基本的には高いし、値段もサービスも場所によって違うので、探すのに時間がかかりそうだ。何より、うちの父の場合は、アルツハイマーが3割、ピック病が7割といった医師の見立てで、記憶に関してはわりと保たれており、施設に入ることには、本人が絶対に了解しないだろう。無理に連れて行くこともできないし、だまして置いてこようものなら、本人から私の携帯に「帰る!」と電話ががんがん入り、私が参ってしまう。そのせいでイライラした父が、万が一、施設でトラブルを起こしたら、「スタッフを守るため」と、鎮静作用のある薬を使われるかもしれない……などと考えるだけで、こっちが病気になりそうだ。

 帯状疱疹になった時は、日々、父が通所している小規模多機能型居宅介護事業所で長時間預かってもらおうかと思ったが、父のルーチンをむやみに崩すと落ち着きがなくなる可能性もあるため、日常のパターンを大きく変えることはしなかった。別に住んでいる姉妹には介護への協力はほぼ望めないので、普段はケアマネジャーに、父の体調などから、日々の細かいことまでを報告、相談し、一緒に対処法を考えてもらっている。プロだし、細かい話も日々の介護に関わるので、私も遠慮なく話せる。幸い愚痴を聞いてくれる友達もいて、おかげで、あまり思い詰めないですんでいる。

介護する人が自分の心身をどう守るか

 日々起きる細かいこと、人が聞けば、くだらないと思うようなことでも、共有できる存在があれば、介護する人は助かる。同居していない家族がいるなら、通所サービスが休みの日に、ほんの数時間でも実家に来て面倒を見たり、家から連れ出したりしてくれたら、同居している家族にかかる重圧がどれほど軽減されることか。

 子供の世話と介護は違う。相手は、どんどん成長していくのではなく、後退していくのが普通だ。親の認知症が進んでいくのを見るのはつらい。新聞などで、介護で悩み、心中したり、親を殺してしまったり、という悲しい事件を見かける。そういう時、「役所に相談に行っていれば」とか、「周囲はもっとなんとかならなかったのだろうか?」といった声を聞くが、追い詰められていく心境はわからなくもない。介護をしていると孤独に陥りやすいし、気力、体力の消耗が激しく、周囲や役所に相談し、わかってもらう努力さえ面倒くさくなるのかもしれない。家族や親類にSOSが来ないからと、安心なわけではない。「頼りのないのはいい知らせ」とは、むしろ真逆の気がする。身内がいるのに協力が得られない場合は、そこに助けを求めるのにエネルギーを使うよりも、いかに公的な介護サービスを活用するかに知恵を絞ることをお勧めする。一人で悩まないために。

 なんてことを書いていたら、あごの下がふくれていることに気付いた。がんや炎症など、やっかいなことも多い場所なので、「ついに重病きちゃったかな」と思いながら恐る恐る病院に行くと、医師はていねいに触診しながら、「脂肪の塊のようだね」とのこと。「ギャフン」って、人は実際には言わないけど、言いたくなった。

 今後、どのように自分の心身を守るか。それも大きな課題だと思う。ルーチンの生活で父は落ち着いてきたので、すきを見て、小規模に父を宿泊させ、猫も預けて旅行にでも行きたいものである。(つづく)(田中亜紀子 ライター)

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田中亜紀子(たなか・あきこ)
 1963年神奈川県鎌倉市生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、OLを経て、ライター。女性のライフスタイルや、仕事について取材・執筆。女性誌・総合誌などでは、芸能人・文化人のロングインタビューなども手がける。著書に「満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか」(PHP新書)、「39.9歳お気楽シングル終焉記」(WAVE出版)。

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1件 のコメント

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読んでいて共感の嵐です!

パタパタmama

私は、義理の母の介護をしだして5年目です。 介護当初は、いきなり義理の妹に介護を主人経由で丸投げされ…2歳になったばかりの子供と反抗期の12歳の...

私は、義理の母の介護をしだして5年目です。
介護当初は、いきなり義理の妹に介護を主人経由で丸投げされ…2歳になったばかりの子供と反抗期の12歳の息子たちとずっと夜勤の主人、ショートの面会にさえ来ない義理の兄、毎週末預かると言っていたのに私に介護を押し付けたら2年目からやっと月一預かるようになった義理の妹、月一初めての介護に身体も心もついて行かずでした。
帯状疱疹!私も2度程なりました笑っ介護あるあるですかね笑っ!今では、こうして笑い話にもなってきました。こちらのコラムを読ませていただいて、泣けてきました。私だけではない!!と。苦痛、苦労…でも、やはり愛情もあるのは確かで。私は、ケアマネージャーさんにそこまで細かく話せていないかもしれないなとか…義理の母の良いところを見ないと、全てを投げ出したくなりそうで…と思うのか…片麻痺なのに勝手に動こうとして大変なこと…憎く思ってしまうことがあること…とか話せば良いのかもしれないと…。弱音を吐くところを自分で無くしていたのかもと気づかせてもらいました。良い日もありますが、多くは本当に気を張り詰めている日々でしんどいですよね。。。面白、おかしくに変換出来るようなりたいものです!ありがとうございました。これを読んで救われている方が沢山おられると思います。

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