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僕、認知症です~丹野智文45歳のノート

医療・健康・介護のコラム

「認知症になっても働ける社会」って?…若者と豚しゃぶを食べて考えた

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病名を見て人を見ていない

「認知症になっても働ける社会」って?…若者と豚しゃぶを食べて考えた

下河原忠道さん(向かって左)と対談

 私は、ミスを防ぐ工夫をして環境を整えれば、認知症の人でも働けるという話をしました。症状は人によってさまざまですから、当事者の話をよく聞いて、その人がどんなサポートを必要としていて、どんな工夫があれば働けるのかを一緒に考えてほしいのです。

 ところが実際には、「認知症」と聞くと「何もできない人」と思い込んでしまう人がとても多いのです。私がスマホを操作しているだけで「認知症なのにすごい」なんて言う人もいるし、揚げ句には、自販機で飲み物を買ったら「ジュースが買えるんですね。すごいですね」と言われたこともあります。病名だけを見て、目の前の私をちゃんと見ていないと感じます。

 学生たちは、笑ったりうなずいたり、中にはメモをとる人もいて、私たちの話を熱心に聞いてくれました。こうした私の経験や思いは、さまざまな場で繰り返し語ってきましたが、認知症に対するイメージがすでに固まっている人の考えを解きほぐしていくのには時間がかかります。これから認知症のことを学び、社会に出ていく人たちと話すことができて、とてもいい機会をもらったと思いました。

認知症なら間違えてもいい?

 認知症の人が働くレストランというと、2017年に東京都内で期間限定で開催された「注文をまちがえる料理店」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。「注文と違う料理が出てきても、まあいいか」というコンセプトで話題になりました。認知症の人の就労や社会参加について、人々が考えるきっかけになったと思いますが、私自身は、この催しについては「もっと改善できる部分があるんじゃないのかな」と思っていました。

 認知症の人が注文を間違える心配があるなら、最初からお客さんに自分で注文を書き込んでもらえばいいんじゃないでしょうか。各テーブルに「A、B、C……」と書いておいて、認知症のスタッフにも「この料理はAテーブルに運ぶ」ということがはっきりと分かるようにしておけば、迷うこともないと思うのです。

「環境を整えれば働ける」実証の場に

 私自身は、会社で働く時には自分なりの工夫を重ねて、少しでもミスを減らすようにしてきました(詳しくは、 2018年2月のコラム に書かれています)。ですから、認知症の人が間違えるということを前面に掲げたネーミングには、悔しい気持ちが先に立ってしまいます。「認知症の人が間違えてもいいじゃない」と言う前に、まずは間違えないためにはどうしたらいいかを一緒に考えてほしいのです。

「認知症になっても働ける社会」って?…若者と豚しゃぶを食べて考えた

学生たちと同じテーブルを囲んで語り合いました

 私の思いに下河原さんも共感してくれて、レストランの運営にも生かしてくれるようです。まだオープンしたばかりなので、お店で働く入居者の姿を見られるのは少し先になりそうですが、認知症の人もそうでない人も同じように働ける仕組みにして同じ賃金を払うと聞いています。

 環境を整えれば、認知症の人も一人前の仕事ができる――。それを実証する場になれば、私もうれしいです。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

                   ◇

 今月から、毎月第2木曜日(原則)に更新します。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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