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摂食障害 誰でも発症の恐れ…数年かけ辛抱強く治療

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摂食障害 誰でも発症の恐れ…数年かけ辛抱強く治療

 生きるための営みである「食」への感覚が崩れ、極端に食べなかったり、食べ過ぎたりを繰り返す病気が「摂食障害」。ストレスが多く生きづらい社会を反映した複雑な心身の症状で、誰でも発症する恐れがある。(矢沢寛茂)

  拒食・過食2タイプ

 摂食障害は、主に二つの症状に分けられる。

 「神経性やせ症」は、かつては「拒食症」とも呼ばれた。わずかな体重の増加におびえるあまり食べることを拒んだり、下剤などを使ったりして異常にやせる。標準体重の65%未満になれば重症となる。心拍の乱れや低血圧、低体温などで全身が衰え、飢餓と似た症状が出る。10~20代の女性に多く、無月経や骨密度の低下なども併発する。回復や治療が難しく、自殺を含めて患者の1割前後が死に至るとの報告がある。

 一方、「神経性過食症」は、大量の食べ物を一気に取る“むちゃ食い”をしては、吐き出したり、極端な運動や絶食などで埋め合わせようとしたりする。これも若い女性にみられる。

 摂食障害が起きるのは、ストレスや対人関係の悩み、成長への不安など個人的な要因と、勉強や仕事といった競争の激化など社会的な背景がある。

 やせ症は、食べるのを我慢して体重が減ることで自分を制御できていると感じられ、ストレスや心の傷を直視しなくて済むという気持ちから起こる。何事にもまじめな努力家ほど陥りやすいという。

 過食症は、衝動的な暴食を通じて、嫌なことを忘れたり吐くこと自体に解放感を感じたりしたいという気持ちが発端となる。家計を極度に圧迫しながらも、悪循環を断つのが難しいとされる。

  男性にも増加

 摂食障害は、中高年の女性、男性にも増えている。スポーツ選手は日常的に食事と体重の管理に気を配り、限界に挑もうと無理をする条件が重なるため要注意で、体操のように体形の見た目が評価や成績につながる場合、リスクはより高まる。全米大学体育協会の調査では、女性選手の約3分の1に発症の危険性があるとされる。

 治療に向けては、すぐに効く方法はなく、病状の回復を図りながら、家族らを含めて生活や心理面のサポートにも取り組むことが大切だ。

 深刻なやせ症状は命に関わるので、入院して体重を増やすことを最優先する。辛抱強く、数年単位で向き合うことになる。

 過食症の場合には、まず食習慣と生活リズムの改善を図る。過食を無理に抑えさせず、心身の状態を自分で認識させ、対処できたという経験を少しずつ積むのがポイントだ。

 2015年には、摂食障害の治療支援センターが全国4か所に開設され、専門の治療を受けられる仕組みが整いつつある。患者や家族同士で支える自助グループも活用した方がいい。

 なにわ生野病院(大阪市)心療内科部長、生野照子さんは「現代に生きる私たちは、食べ物があふれているのに、モデルのような細身の外見がもてはやされるといった相反する価値に揺さぶられている。ストレスを感じながら、病気を打ち明けられず、受診しないまま苦しむ人は多い。諦めずに勇気を持って治療を受けてほしい」と話している。

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