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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

引きこもった銀行員、原因は父との葛藤!

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長男は、父が「否定したい自分」を受け継いだ…父親の面談2回目

長男は、父が「否定したい自分」を受け継いだ…父親の面談2回目

夏目: 次の課題に入ります。人には「意識し考えることができる部分」と「意識できない、心の深い部分」があります。「無意識とか、深層心理」と呼ばれています。本人はわからないが、重要な働きをしています。

父親: 潜在意識か?

夏目: もっと深い部分ですね。精神分析学が提唱した理論です。これに基づいた治療により、多くの人が生きやすくなっています。

父親: 知らないなぁ。

夏目: そうでしょう。専門用語ですからね。ユングという精神分析の大家がいます。

父親: アドラーなら聞いたことがあるが

夏目: 「嫌われる勇気」で有名なアドラー博士も精神分析学です。ユング博士は人の「深層心理の世界」に「生きている自分」と「生きられない、否定したい自分」があると提唱しています。「生きられない自分」を「影(シャドー)」と名付けています。

<間をおいて>

「二つの自分」があるのを知ってくださいね。難しいですが。

父親: 二重人格ですか。

夏目: 近いかもしれません。息子さんは「エネルギーとパワーにあふれた部分」が少ないです。

父親: ないですね、まったくない。困るんだ。

夏目: 理論上の話ですが、お父さんが生きられなかった「影」である、優しく過敏な自分を息子さんは受け継いでいますよ。

<10分くらい沈黙。考え込んでいます>

父親: 受け継いでいる……か。生きられなかった「優しく過敏な自分」……。うーん、うーん……。

<考えています>

息子は父の影を生きている

夏目: 受け継いで、生きているのですよ。精神分析の世界では「父の影を生きる息子」とよく言われます。

父親: 少しは……実感はできるが、それだけではないでしょう。

夏目: ほかに環境や母子関係などがあるでしょう。一つの見方ですが、「父の影」が私は (きも) と考えます。息子さんを、そう理解してほしいのです。

<父親は考え込んでいます。そして意を決したように>

父親: そう考えれば良いのですか?

夏目: そう、そう、そうなのですよ。息子さんへの見方が変わって、親子の連続性を感じる。あなたも変化すれば、息子さんも自由に、楽になりますよ。

父親: 良くなるのであれば。

夏目: 一定数の「創業者」と「息子さん」に見られる関係です。

父親: 息子と、よく似た2代目はいますわぁ。

夏目: そう、そう。息子さんのようなケースは私にとって3人目です。そのうち2人は当てはまり、1人は違っていましたが。理解し、実行していただけると親子ともに楽になり、新しい生き方ができるようになりましたよ。

父は長男への事業の継承を諦めた…父親との電話

父親: 諦めましたわ。うーん、苦渋の選択だが、継がすのを諦めるのは。息子が病気にならず、生きてくれたらよいと、自分に言い聞かせています。

夏目: ご理解いただき、 (うれ) しいです。

父親: 受け入れるのが難しくって。妻とも数回話し合いました。それしかないか…ないんだよね……。

 このような過程を経て、長男は、本当にやりたかった仕事、教師にチャレンジすることになったようです。精神分析の考え方が、多くの人に当てはまるかどうかはわかりません。一つの理論として、ヒントや思考の補助線として利用しいただければ、見方や視野などが広がり、対処法の幅が広がりますよ。

引きこもった銀行員、原因は父との葛藤!

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)
 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会前理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」。ブログ「ストレス点数の夏目」はこちら

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1件 のコメント

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時代と個性の違いを理解できる人とできない人

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

よくある話ですが、修正可能な年代での話であればよかったですね。 今生きている人の多くは昭和、平成、令和と生きてきているわけですが、いまだに昭和の...

よくある話ですが、修正可能な年代での話であればよかったですね。
今生きている人の多くは昭和、平成、令和と生きてきているわけですが、いまだに昭和の成長神話は根強いです。
同じ勝負をすれば、数も根性も違う途上国との競争で勝てるわけがないのに、日本国内の市場が大きいことが目を曇らせてしまいます。

家庭だけでなく、職場でもよくある話で、一定年限は我慢しながら現場で実務や人間関係の不条理を学ぶとともに、無理をしないで、次の道もあることを知るのが若者が潰れないために重要な事です。
幸い、いつの時代でも優秀な人材や特殊な人材は必要で、時代背景を鑑みてか、30歳までの第二新卒は一般的になってきています。
一人でも多くの若者が壊れないようにと思います。

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