田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
今年で32回目「世界禁煙デー」 2020東京オリンピック・パラリンピック見据え呼びかけ
新連載コラム「田村専門委員のまるごと医療」がスタートします。医療取材のベテラン記者が、日々の取材を通じて幅広い医療のニュース、話題について解説します。
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5月31日は世界禁煙デー。世界保健機関(WHO)が定めたもので今年32回目を迎えた。
日本は、この日から6月6日までの1週間を禁煙週間とし、全国各地で禁煙や受動喫煙防止の呼びかけが行われている。テーマは、2016年から4年連続で「2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子ども達をまもろう~」。見据えているのは、たばこのない20年の東京オリンピック・パラリンピックだ。
たばこが、がんや循環器、呼吸器などの病気のリスクを高めることは科学的に明らかだ。喫煙者本人だけでなく、周囲の人がたばこの煙を吸ってしまうことによる受動喫煙の害も深刻だ。WHOによると、17年の1年間に世界でたばこが原因で亡くなった人は800万人以上にのぼる。うち約700万人は喫煙者本人であり、約120万人が受動喫煙による犠牲者としている。
成人の喫煙率は17・7%に減少
国民健康・栄養調査によると、習慣的にたばこを吸っている人の割合は、男性が2007年の39・4%から2017年には29・4%へ、女性が11・0%から7・2%へ、全体では24・1%から17・7%へと大きく減少している。年代別では、男性では30歳代、40歳代が約40%と高く、女性では40歳代が12%余りと高い。
法改正で2020年4月から原則屋内禁煙に
20年を前に、昨年7月、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が成立した。今年7月には学校や病院、行政機関が屋内全面禁煙になる。改正法が全面施行される来年4月には、既存の小規模店を除き飲食店なども原則屋内禁煙になる。東京都など独自に条例を定めて対策に取り組む自治体も増えている。
WHOが世界各国の公共の場所における禁煙化の取り組みを4段階で評価したところ、現状の日本は最低ランク。改正法が施行されても下から2番目に1ランクあがるだけだ。小規模店での例外が設けられるなど物足りない点も多いものの、何とか1歩前進といったところか。
加熱式たばこ「健康そうなイメージ先行が問題」
2020年に向けてのたばこ対策が進むなか、新たな課題となっているのが急速に広がりつつある加熱式たばこだ。たばこの葉を燃やさずに専用器具で加熱して吸うもので、煙は出ないもののれっきとしたたばこ製品である。
しかし、従来型のたばこから加熱式たばこに替えたことで「禁煙した」と言ってみたり、従来型と加熱式たばこを併用しているせいで、かえって禁煙するのが難しくなったりするケースもみられるという。
「新型タバコの本当のリスク アイコス、グロー、プルーム・テックの科学」(内外出版社)の著書がある田淵貴大・大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長は、加熱式たばこによる発がんリスクなどの長期的な健康影響を評価できる十分なデータはまだないにもかかわらず、健康そうなイメージが先行していることが問題だと指摘する。
「加熱式たばこに健康リスクが減る証拠はどこにもありません」。根拠のない健康イメージに流されないよう警鐘を鳴らしている。(田村良彦 読売新聞専門委員)
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