リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
生命(いのち)を救う最終手段 「臓器移植」はなぜ増えない?
この連載の3回目に取り上げた腎臓病を患っていた人工透析患者が透析中止で死亡した問題で、先月31日、日本透析医学会の声明が出ました。学会は患者の意思を尊重して透析中止を決めた東京都の公立福生病院の判断を妥当としたのです。
人工透析は、移植への「つなぎ治療」
これで、この問題はいちおう収束するでしょうが、背景にある大きな問題は残ります。なぜなら、この患者さんは腎移植をすれば助かっていたからです。腎臓機能の低下は死に直結します。そのため、人工透析をするわけですが、これは諸外国では「つなぎ治療」にすぎません。最終的な治療、つまり、 生命 を救うのは腎移植なのです。
ところが、日本では腎移植があまり行われていません。ドナー(臓器提供者)が圧倒的に少ないからです。そのため、全国で約33万人いる透析患者は、つらい闘病生活を強いられています。
ドナー不足で進まない臓器移植
ドナーの不足は、腎臓だけではありません。心臓、肺、肝臓、 膵臓 でも同じです。国際臓器提供移植登録(2017年)によると、人口100万人当たりのドナー数はわずか0.9人。最高はスペインで46.9人、アメリカが32.0人、お隣の韓国ですら11.2人となっていて、日本は最低レベルなのです。
臓器移植をする方法は二つあります。一つは、心臓が止まった後に臓器提供する「心停止」後の臓器提供です。ただし、心停止後の臓器は全身に血液が流れなくなっているので、虚血状態に弱い心臓や肝臓などは移植できません。心停止後に移植できる臓器は主に腎臓だけです。
それで、もう一つの方法、「脳死」での臓器提供が行われるようになりました。脳死状態での心臓や肺なら移植が可能となります。
しかし、日本では、当初、脳死での臓器提供は法的に認められませんでした。それが、何度かの法改正で認められるようになったのですが、ドナー数は増えていません。
そのため、今回問題としている腎臓移植では、生体腎移植が行われています。これは、健康な人の体から片方の腎臓を切り取って移植する方法です。肝臓でも行われています。たとえば、外務大臣の河野太郎氏は父親の洋平氏に自身の肝臓の一部を提供しています。
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確かに透析は辛くて大変だと、聞いています。でも一部の方ですが大っぴらにお酒を飲んでいる方も居たり、人前でインシュリンを、打つ方をみると病気をバカにしているしか思えません。
それで自分は大変だ‼️って言っている方を見てしまったので移植に対しての、気持ちが無くなったのも事実です。
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僕は不可解な印象で、むしろ芸能人によくある「世間を騒がせた罪」的な意味合いで、世論を落ち着かせるために議論が無理やり決着させられた感じがします。
確かに、当事者でもなければ、透析学会幹部でもないので、公式な意見ではありませんが、本当に十分な説明が患者や家族に伝わっていたかは不明です。
モラルがなければ、証言やカルテなどの記録が簡単に作れてしまうことの怖さをいったい何人が理解しているでしょうか?(知っている方が異常なのかもしれませんが。)
ところで、「生命を救うのは臓器移植」という考えに僕は疑問を感じます。
血液透析や腹膜透析の手間や苦しみを思えば、一定数の患者には臓器移植こそが完全なる救いなのでしょうが、透析その他の人工臓器は救いではないのでしょうか?
臓器移植の厳密な運用は文化的な側面だけでなく、人身売買や巧妙な殺人事件の回避の意味合いもあります。
そして、傷ついた腎臓を抱えたまま生きる生命や生活をどう評価するかが隠されています。
言い換えれば、「命を救う」というのは客観的な一つの言葉でくくりきれないものを、ある程度第三者でも了解可能な表現や多面的な意味合いに置き換えて形作っていることに確信犯であるべきではないかと思います。
令和という日本固有の書籍由来の元号が他国を刺激していることや北方領土が日露関係だけの問題でないことに似ています。
(ついでに言えば、太平洋戦争で死んだのはアジアや欧米の民衆だけではなく、沖縄を含む日本の民衆です。)
それに、ひとたび出来上がった制度や文化を急速に破壊することはそれはそれで大きな問題を生む母床です。
フードロスに、様々な廃棄コストなどの無駄、税務処理上の問題や、(たまにパソコンに穴をあけて消しても不問)政治献金などのトラブルを考えれば、透析で生かされる命が無駄か否かというのは、少なくとも保留にしていいのではないかと思います。
命を救うの名のもとに、どれだけの問題や流血が起こったか、歴史を考えればわかるでしょう。
命より正義をふりかざしたかと思えば、正義より命や平和の大切さを説いたり、人間は節操のない生き物ですが、まだましなやり方はあるでしょう。
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