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メニエール病に「中耳加圧治療」…自宅で「圧波」めまい減

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メニエール病に「中耳加圧治療」…自宅で「圧波」めまい減

 激しいめまい発作に難聴や耳鳴りも伴うメニエール病で、薬が効かない患者向けの「中耳加圧治療」が、昨年9月に公的医療保険の対象になった。従来は手術しか方法がなかったが、体に負担をかけずに症状を改善できる可能性が出てきた。(中島久美子)

 めまいは突然起こり、しばらくすると治まる。こうした発作を繰り返し、難聴や耳鳴り、耳詰まり感などの症状も、良くなったり悪くなったり変化する。メニエール病の患者は国内に約4万人いるとされる。

 耳の一番奥にある内耳にリンパ液が過剰にたまることで起こる。いわば内耳の水ぶくれで、平衡感覚の維持や音を脳に伝える働きが鈍る。ストレスや疲れ、睡眠不足が引き金になる。

  重症者に選択肢

 治療は、十分な睡眠や適度な有酸素運動など、生活習慣の見直しから始める。抗めまい薬や利尿薬なども必要に応じて服用する。しかし、患者のうち少なくとも1割は、こうした基本の治療だけでは改善しない。

 これまで、次の一手は手術だった。リンパ液を排出する通路を作ったり、鼓膜に針を刺して中耳に薬を入れ、めまいを感じる神経を壊したりする方法だ。いずれも、すぐに効果が期待できる一方、再発や聴力低下のおそれがある。

 中耳加圧治療は、基本の治療と手術の中間的な位置づけだ。患者は耳鼻咽喉科専門医を受診した上で、医療機器を借りて自宅で自分一人で行う。本体につながるイヤホンから、強弱がついた圧力(圧波)が出る。これが中耳を経由して内耳まで届き、たまったリンパ液を外に押し出す。

 石川県の主婦(53)はメニエール病と診断されて5年余り。聴力低下が心配で手術に踏み切れず、1月に中耳加圧治療を始めた。毎日朝夕の2回、3分間ずつ機器を使う。圧波については「トンネルで耳がキーンとなる感覚に似ている。痛みはない」と説明する。

 月1回、主治医を受診して、めまいの回数や程度を記録した「日誌」を提出する。治療を続けるうち、重い発作が減り、めまいを感じない日も出ている。

  独自機器で成果

 この治療は、欧米では2000年ごろから普及。日本では12年から独自の機器開発が始まった。富山大と岐阜大で実施した臨床試験(治験)で、この治療を約4か月間続けた19人は、重いめまい発作の回数が月平均で7・4回から1・4回に減った。

 難聴になり、しばらくたってからめまい発作が起こる遅発性内リンパ水腫患者も、この治療の対象だ。治療が受けられる医療機関も徐々に広がっている。富山大耳鼻咽喉科教授の 将積しょうじゃく 日出夫さんは「再発予防も踏まえると、1年は続けることが大切。すぐに治したいなら、この治療をせずに手術する選択もある」と指摘する。

 めまい発作を繰り返す患者の中には、「また発作が起きたら」と不安で、医師から運動を勧められても、安静に過ごす人が多い。

 東海大(神奈川県伊勢原市)耳鼻咽喉科准教授の五島史行さんは、「自宅で中耳加圧治療に取り組めば、めまいを自分で治そうという意欲がわき、運動を始めるなど生活全般にも良い影響が期待できる」と話している。

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