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うんこで救える命がある 石井洋介

医療・健康・介護のコラム

心残りを生んだ免許取り上げ

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対話の力で納得の免許返納を

 医療の現場では、回復が見込めない人と向き合うことが多くあります。救急車で運ばれてきた緊急の場面だけでなく、老化が進んで人生の最終段階に近づく場面もあります。しかし、高齢者本人や家族に心の準備ができていないと、医師がその場で回復は難しいと伝えても、老いや死をなかなか受け入れてもらえません。

 僕は、人生の最終段階をどのように過ごしたいかを、本人があらかじめ家族や医療・ケアの関係者と繰り返し対話する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」に注目しています。厚生労働省が「人生会議」と呼び、推奨しています。話し合いのテーマは、延命治療を望むかや最後の時間をどこで過ごしたいかで、周囲の人は本人の意思が尊重されるように気を配ります。

 人生会議によって、本人は衰弱して気持ちを周囲に伝えられなくなったときに備えられます。さらに本人や家族は、死について考え、受け入れやすくもなります。僕は、運転免許の返納に、この人生会議のやり方を応用できるのではないかと思っています。

 運転に支障のある人が車に乗り続け、事故を起こす事態は避けたいものです。運転に不安を覚えた運転者は免許返納を受け入れる必要があります。そこで家族や医療関係者は、本人が納得して自主的に返納できるようサポートしていくのです。本人がいない場で話し合いを進め、無理やり免許を返納させたり介護施設に入れたりすると、体調を崩して悔いの残る結果になりかねません。

変化を受け入れる人生に魅力あり

 A先生は、不本意に返納し弱っていった男性をみた経験から、同様の依頼があった際には「次回の更新時には運転をやめても問題ないように、一緒に準備をしていきましょう」と伝えるようになったそうです。運転できなくなるまでの「猶予期間」に本人と家族がしっかりと話をして、免許を失う不安を解消し、自分らしく前向きに生活する手助けをしているそうです。

 車に乗れなければ生活ができない地域に住んでいる人もいます。足腰が弱ったからこそ車に乗れないと不便になります。免許返納後に、施設に入る、家族と同居するなど、車を使わずに暮らす方法を検討する必要があるかもしれません。変化を受け入れることには不安を伴いますが、自分なりの考えを確立し、変化に対応していく人生はとてもすてきだと思います。

 免許の返納を巡る議論は、超高齢社会を迎え、自分たちに合った暮らし方をどう見つけ出すのか、僕たち一人ひとりに問題を投げかけているのだと思います。僕自身も、高齢者本人の意思を最大限尊重し、人生の最終段階に老いや死を受け入れてもらえるよう準備を進めていける医療者になりたいと思っています。

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ishiyousuke_prof

石井洋介(いしい・ようすけ)

 医師、日本うんこ学会会長

 2010年、高知大学卒業。横浜市立市民病院炎症性腸疾患科、厚生労働省医系技官などを歴任。大腸がんなどの知識の普及を目的としたスマホゲーム「うんコレ」を開発。13年には「日本うんこ学会」を設立し、会長に就任。現在は、在宅医療を展開する山手台クリニック院長、秋葉原内科saveクリニック共同代表、ハイズ株式会社SHIP運営代表、一般社団法人高知医療再生機構特任医師。著書に「19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと」(PHP研究所)など。

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1件 のコメント

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心掛けようと思いました。

じゃじゅじょ

職業柄、明かせないのですが、まさにご高齢の方の免許証を含めて対応する立場にいます。 今回の記事を拝見して、今後の参考にしようと思いました。 該当...

職業柄、明かせないのですが、まさにご高齢の方の免許証を含めて対応する立場にいます。
今回の記事を拝見して、今後の参考にしようと思いました。
該当する高齢者のご家族や介護職の方から相談を受けるのですが、私は、少しでも不安を感じたら、運転免許証の自主返納を強く勧めていました。
自ら自主返納される方は、おそらく認知機能検査に合格となるであろうと思われる場合が多いです。聡明な受け答えをされている方が多くいらっしゃいます。
しかし、会話していて不安を感じる方が、運転免許の更新手続きをされる事もあります。
システム上で更新できてしまう場合があるのです。
認知機能検査の結果により、医師による診断書で運転不可となれば、自主返納ではなく免許取消処分となるので、該当する高齢者が受取る書類が変わります。
自主返納の通知書というものと、取消処分書では意味合いも残るモノも変わります。
記事を拝見してから、今までは積極的に自主返納を勧めていましたが、更新後の有効期限内に自主返納した後の生活を考えてもらう方法も取れるのではないかと、できる範囲で新たな勧め方を創造していこうと思いました。

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