心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」
医療・健康・介護のコラム
「浮気で生まれた子!」と娘をなじる夫…止まらない下血が35歳女性に教えた「大切なこと」
「先生、先月から出血が止まらないんです」
と、ある日の外来でP子さんが訴えてきた。P子さんは35歳の女性。「過敏性腸症候群」の診断で外来に通っている。
最初の症状は「腹痛」と「便通異常」。胃のあたりが重苦しく、時々強い痛みになる。もともと便秘症だったが、痛みとともに下痢が出現した。胃や大腸の内視鏡検査では、特に異常なし。採血や腹部エコーでも、問題はなかった。ストレスが原因ではないかと考えて、これまでの出来事をいろいろ聞いてみた。
「キミみたいにすてきな人は初めて」と言われ
P子さんの人生は、幼少時から学校を卒業するまでは、特別なこともなく、順調なものだった。就職し、会社の受付をしていたが、ある時期から若い男性がよく訪問してくることに気づいた。たまたま会社に来て、P子さんに一目 惚 れしたらしい。
その後、彼からのお誘いを受けるようになった。もともと地味なタイプの彼女は大いに困惑したが、「キミみたいにすてきな人に会うのは初めて」などと言われると、ちょっとときめいてしまう自分がいた。
徐々に親しくなって、電話やメールでやりとりをするようになり、半年ほどの交際期間をへて、28歳で結婚した。
ところが、結婚後しばらくして、夫の態度が変化してきた。仕事中に彼女が浮気をしているんじゃないかという「嫉妬妄想」が始まったのだ。
それからが大変だった。携帯やメールの着信歴をチェックする。友だちに会いに行くと尾行される。職場にいても、外からじっと監視されるようになった。さらに、彼女が浮気をしていると信じ込んだらしく、毎日のように、「この裏切り者!」、「人間のクズ!」、「死んでおわびをしろ!」と 罵 るようになった。
その頃から、P子さんに、胃部異和感や強い腹痛などの症状が始まった。便秘や下痢も悪化し、内科の外来を受診することになったのである。
「過敏性腸症候群」の背後には虐待が…
検査結果とこれまでの経過から、「機能性ディスペプシア」、「過敏性腸症候群」の診断で治療を開始した。胃腸の薬と、お守り代わりの安定剤などで、症状は少しずつ軽快してきていた。だから、今回の突然の下血は、P子さんにとってショックだった。
早速、大腸の内視鏡検査を行った。直腸からS状結腸、下行結腸まで、左半分の大腸に、強い発赤やびらん(粘膜剥離)、小さな潰瘍が多発。典型的な「潰瘍性大腸炎」の所見になっていた。
「過敏性腸症候群」は、ストレスと強い関係のある病気である。P子さんも、「夫が激高して『言葉の暴力』が始まると、おなかがキューッと痛くなり、そのうち下痢が始まります。胃や腸が、私の気持ちを代弁してくれるかのようです」と言う。
「潰瘍性大腸炎」はこれと違い、免疫系の病気である。免疫系のバランスが崩れて、大腸の粘膜への攻撃が始まり、粘膜がやぶれて潰瘍や 膿瘍 (膿の塊)を作るのだ。
この二つは、全く別の病気だと考えられてきたが、最近、両者の合併例や移行例が報告されるようになった。精神的なストレスが、身体の「酸化ストレス」を引き起こし、全身の「慢性炎症」が悪化して免疫系の異常にまで及ぶと、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎が発症するという。P子さんの場合も、これにあたるのかもしれない。
すると、彼女は、その間の事情を語り出した。
「今度のストレスは、夫の子どもへの虐待でした……」
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私も子どもの頃、父親に精神的に虐待されました。シカトされ、話しかけると睨み付けて無視。結局、愛人を作り出ていきました。私がお腹にいるとき暴力を母...
私も子どもの頃、父親に精神的に虐待されました。シカトされ、話しかけると睨み付けて無視。結局、愛人を作り出ていきました。私がお腹にいるとき暴力を母に振るったらしい。今考えると、この例のように自分の子どもではないと考えていたのではないかと思う。
この例は離婚して正解です。
離婚後、私は母の親族にいじめられましたが、この娘さんが悲しい思いをしないようにしっかり守ってあげてと思います。
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まにあってよかった・・・
okko
P子さん、大変でしたね。よくがんばられましたね。 でも何よりよく離婚を決断されて、その後の諸々を乗り切られましたね。 あなたが我慢していたら、娘...
P子さん、大変でしたね。よくがんばられましたね。
でも何よりよく離婚を決断されて、その後の諸々を乗り切られましたね。
あなたが我慢していたら、娘さんがどうなっていたかと思うと・・・
リアルに母子家庭は大変です。でも、どんな大変も、生きていればこそ、です。
P子さん、あなたのこの選択を
娘さんがもう少し大きくなったら、ぜひ伝えてあげてください。
もしかすると、娘さんがいらっしゃらなかったら
あなたは、あなたの身体の声を聞くことができなかった、かもしれません。
あなたが、あなたの身体の声を聞けるようになるために
娘さんがあなたのところにきてくれた、ようにも思えます。
人間誰しも迷い惑っていくものですが
その中での、あなたの決断と、勇気と、気概に、拍手喝采です!
私(女62歳)も世間的には人生負け組のようなものですが
この結果を知っていても、人生の岐路でもう一度同じ選択を迫られたら
100%同じ選択をするであろう気づき、絶望したことがありました。
あれもこれも、しゃぁ〜ない、です。
でも、今おそらく「私」より大切な「娘さん」がいらっしゃるPさん。
身体が教えてくれた、ギリギリの選択に涙がとまりませんでした。
Pさんと娘さん、きっと幸せになります!!!
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