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ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』

医療・健康・介護のコラム

父の湿疹に医師は「年のせい」 治らず別の病院に行くと、「あった! 皮膚に卵が」…

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 「お父さんの 臀部(でんぶ) や腕に赤いぶつぶつが出てるのよ。すごくかゆいみたいだから、病院に行ったほうがいいと思う」

 通所している看護小規模多機能型居宅介護事業所のケアマネさんから、ある日、電話があった。しょうがないこととはいえ、正直「また病院通いか!」とため息が出た。入院と手術後の混乱の時期をこえ、精神的には落ち着いてきた父だったが、今度は身体的な乱れが生じてきた。定期的な糖尿病と認知症の通院に、突発的な通院が加わる。

「トイレ事件」に続く難事

父の湿疹に医師は「年のせい」  治らず別の病院に行くと、「あった! 皮膚に卵が」…

 その電話の少し前にも、「トイレ事件」があったばかりであった。気が付くと、父が家のトイレを出たり入ったり。出てきて自室に戻ったと思うと、1分もしないうちにまたトイレに駆け込む。「そんなにすぐに行くのなら、落ち着くまで、しばらくトイレにいればいいのに」と言っても、聞き入れない。あわただしく出入りを繰り返し、一日に100回以上トイレに行ったと思う。

 病院に行って聞くと、腸の上の方は便秘で詰まっているのに、下の方が下痢になったのだという。摘便してもらった後は下痢が続き、リフレッシュパンツ(トランクス型の紙オムツ)を導入し、何とか事態が収拾したばかりだったのだ。

 通院は、小規模多機能のサービスとして車で送迎をしてくれるので、運転をしない私にはとてもありがたい。小規模多機能の車に私も一緒に乗せてもらい、家から遠くない初めて行く皮膚科に出かけた。午後からの診療に早めに行ったせいか、がら~んとしているのが少々気になる。高齢の男性医師に父の湿疹を見せると、まず皮膚の一部をとり、顕微鏡でさらっと見て、「ダニなど虫はいないね」と言った。次に、血液をとってアレルギー検査をしたが、特に問題は見当たらない。すると医師は、

 「年のせいだね。年齢が高くなるとかゆみが出るの」

 「そんなことあるの?」と正直思ったが、医師は大真面目だ。そして「かゆくなったら、この薬を塗って」と父に言い、チューブのステロイド剤を処方された。薬局に行くと、薬剤師は「このステロイドは上から二つ目に強いものです」と心配そうだ。その塗り薬に加え、かゆみを抑える飲み薬が出た。父は、医師に言われた通り、始終、薬を塗り、かきむしることもなくなった。

強いステロイドを処方され

 通所先でも薬を塗ってもらい、入浴の際には看護師さんが全身を確認してくれていたが、3週間ほど過ぎた頃、「全然、良くなってないんだけど」とケアマネさんが心配し始めた。ちょうど2回目の診察の時期だったので、再び同じ病院に行くと、また、がらがらである。「良くなっていないんです」と伝えると、医師は発疹の状態を見るだけで、「そうそう簡単に治ったら、われわれも苦労しないよ」と返し、飲み薬と、強いステロイドのさらに太いチューブを何本も処方した。

 強い薬だというのに、そんなに出して平気なのだろうか。気になったが、それで様子を見るように言われ、また数週間が過ぎた頃のこと。夜中に水を飲みに階下に降りた父が、ものすごい勢いで体中をぼりぼりかいている。近寄ってみると、首の後ろにも、腕にも、手の甲にも、真っ赤な丸い形の発疹がひどく出ているではないか。

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田中亜紀子(たなか・あきこ)
 1963年神奈川県鎌倉市生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、OLを経て、ライター。女性のライフスタイルや、仕事について取材・執筆。女性誌・総合誌などでは、芸能人・文化人のロングインタビューなども手がける。著書に「満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか」(PHP新書)、「39.9歳お気楽シングル終焉記」(WAVE出版)。2020年5月、新著「お父さんは認知症 父と娘の事件簿」(中公新書ラクレ)を出版。

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16件 のコメント

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みんと

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