文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』

介護・シニア

父の湿疹に医師は「年のせい」 治らず別の病院に行くと、「あった! 皮膚に卵が」…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

やっぱり「年のせい」じゃなかった!

id=20190524-027-OYTEI50002,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 「これは絶対ひどくなっている。年のせいとか、そんな理由ではない」

 翌日、小規模多機能の看護師さんと話すと、「ちっとも良くならないどころか、ひどくなっているのが気になっていた」というので、「年のせい」にして強いステロイドを出す医師のところにはもう行かず、翌日、ネットで評判の良い近隣の皮膚科を探し、予約はいっぱいだったが、お願いして当日枠で入れてもらった。

 父はピック病の症状で、待合室では落ち着いて待つことができず、うろうろしたり、外に出ようとしたりする。あまり長時間待てない旨を伝えていたので、ものすごい混雑のなか、途中でうまく入れてくれた。診察室に入ると、きりっとした女医さんが、私の話をていねいに聞き、父の全身の発疹をチェックすると、皮膚をとって顕微鏡で見つめる。「(虫は)いないな」と言いながら、再度、皮膚を採取。再びていねいに見たところ、「あった! 卵があったわ。思った通り 疥癬(かいせん) だ」。

 やっぱり「年のせい」なんかじゃなかった! 症状から疥癬を疑った医師が、証拠を見つけるまで粘ってくれて、発見できたのだ。

 疥癬とは、ヒゼンダニ(疥癬虫:かいせんちゅう)に寄生されることによっておこるアレルギー反応の皮膚病。告げられた時、「先生、それは家が汚いからダニが寄生したんでしょうか?」と思わず聞いてしまった。家の中を全部消毒するとしたら、ジャングルのような父の部屋、その他のほったらかしの部屋もえらいことになる……と青ざめながら。

 しかし、医師は「ううん、たとえどんなに汚くて、普通のダニがいたとしても、このヒゼンダニは関係ない。家が汚くても、きれいでも、関係ないの。それに、今回かかったのは『通常疥癬』で、感染力は弱いし、ヒゼンダニは、もし体からポトッと床に落ちるとすぐに死んじゃうから、そういうことではうつらない」とおっしゃるではないか。ほっ!

 疥癬には「通常疥癬」と「角化型疥癬」がある。通常疥癬は、ある程度長い肉体的接触、たとえば、介護で手を長い間つないだり、介助したりすることから感染するのがほとんど。入院している病院や介護施設で感染することが多いという。潜伏期間は1~2か月で、複数の病院に入院したし、通所もしているので、感染経路はすでにわからない。

 一方の角化型疥癬の場合は、体内にヒゼンダニが100万から200万匹もおり、症状も感染力も強い。短時間の接触や落ちた角質からも感染の可能性があるそうで、こっちだったら、うちの大掃除と消毒など、すごく大変だっただろう。通常疥癬でラッキーだったと思おう。

【あわせて読みたい】下腹部や太ももから血を吸う「エロダニ」とは

父娘で飲んだ「ダニを殺す薬」

 その場で私の皮膚も診てくれたが、幸い感染していなかった。まぁ、私が父の手をとることはそうないから大丈夫だとは思っていたが、やはり安心した。ただ、念のためにヒゼンダニを殺す薬を私も飲むことになった。父はその薬をその日に飲み、1週間後、卵がかえったタイミングでもう一度飲んだ。そのほか、かゆみを抑える薬を飲み、「オイラックスクリーム」を体中に塗って、毎日1本使い切ることに。そして、感染を防ぐために、家でも外でも手袋をすることになった。

 ショックだったのは、それまで約2か月塗っていたステロイドは逆効果だったことだ。ヒゼンダニが体内にいるときに使うと、疥癬の症状が悪化するという。まったくもってひどい話だ。せめて前の病院を2度目に受診したとき、もう一度きちんと診てくれていたら、ここまで悪化しなかっただろうに。私も不信に思った時、面倒くさがらず、他の病院にさっさと行けばよかった。ちょっと反省。

 「通常疥癬だって」とケアマネさんに伝えると、向こうもショックを受けていた。なぜなら、通常疥癬は感染力が弱いとはいえ、その小規模多機能の事業所でも「通所禁止」になる病気だったからだ。父は発病から約2か月間通所し、お風呂にも入れてもらっていた。本当に申し訳ない。ただ、幸いなことに、通所している方たちにも職員にも同じ症状は出ていないという。

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190329_atanaka-prof_200

田中亜紀子(たなか・あきこ)
 1963年神奈川県鎌倉市生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、OLを経て、ライター。女性のライフスタイルや、仕事について取材・執筆。女性誌・総合誌などでは、芸能人・文化人のロングインタビューなども手がける。著書に「満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか」(PHP新書)、「39.9歳お気楽シングル終焉記」(WAVE出版)。2020年5月、新著「お父さんは認知症 父と娘の事件簿」(中公新書ラクレ)を出版。

ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』の一覧を見る

16件 のコメント

コメントを書く

後医は名医?

みんと

後医は名医とはよく言われますが、その通りでしょう。ですが、先医ご自身も再度の診療時には後医のおつもりで、発想を切り替える意識が必要ではないでしょ...

後医は名医とはよく言われますが、その通りでしょう。ですが、先医ご自身も再度の診療時には後医のおつもりで、発想を切り替える意識が必要ではないでしょうか。その切り替えができないなら、先医は名医たる後医にはなれないと思いますが。

つづきを読む

違反報告

ひどい医者

クロネコ

私も父の介護をしていたけれど、無神経な医者には心底ストレスがたまった。症状を説明できない患者に、頑張って説明する医療知識のない家族、忙しい医者。...

私も父の介護をしていたけれど、無神経な医者には心底ストレスがたまった。症状を説明できない患者に、頑張って説明する医療知識のない家族、忙しい医者。良い医者に診てもらうと、介護しているこちらも治療されたように心が軽くなるが、心ない医者にあたると最悪です。病院を変えるか、継続して解決するか、悶々(もんもん)と考え続けてしまいます。

つづきを読む

違反報告

父が入院中、全身に湿疹が

yuu

父が入院中、全身に湿疹が出ました。かゆみや痛みはなく、院内の皮膚科医に診てもらいましたが わからないとのことでした、薬疹ではないそうです。原因も...

父が入院中、全身に湿疹が出ました。かゆみや痛みはなく、院内の皮膚科医に診てもらいましたが わからないとのことでした、薬疹ではないそうです。原因も病名も不明のまま。退院時には大量のステロイド軟膏(なんこう)を持たされました。入院中なので他の病院に行くこともできず、非常に心配でした。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事