ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』
介護・シニア
父の湿疹に医師は「年のせい」 治らず別の病院に行くと、「あった! 皮膚に卵が」…
やっぱり「年のせい」じゃなかった!
「これは絶対ひどくなっている。年のせいとか、そんな理由ではない」
翌日、小規模多機能の看護師さんと話すと、「ちっとも良くならないどころか、ひどくなっているのが気になっていた」というので、「年のせい」にして強いステロイドを出す医師のところにはもう行かず、翌日、ネットで評判の良い近隣の皮膚科を探し、予約はいっぱいだったが、お願いして当日枠で入れてもらった。
父はピック病の症状で、待合室では落ち着いて待つことができず、うろうろしたり、外に出ようとしたりする。あまり長時間待てない旨を伝えていたので、ものすごい混雑のなか、途中でうまく入れてくれた。診察室に入ると、きりっとした女医さんが、私の話をていねいに聞き、父の全身の発疹をチェックすると、皮膚をとって顕微鏡で見つめる。「(虫は)いないな」と言いながら、再度、皮膚を採取。再びていねいに見たところ、「あった! 卵があったわ。思った通り 疥癬 だ」。
やっぱり「年のせい」なんかじゃなかった! 症状から疥癬を疑った医師が、証拠を見つけるまで粘ってくれて、発見できたのだ。
疥癬とは、ヒゼンダニ(疥癬虫:かいせんちゅう)に寄生されることによっておこるアレルギー反応の皮膚病。告げられた時、「先生、それは家が汚いからダニが寄生したんでしょうか?」と思わず聞いてしまった。家の中を全部消毒するとしたら、ジャングルのような父の部屋、その他のほったらかしの部屋もえらいことになる……と青ざめながら。
しかし、医師は「ううん、たとえどんなに汚くて、普通のダニがいたとしても、このヒゼンダニは関係ない。家が汚くても、きれいでも、関係ないの。それに、今回かかったのは『通常疥癬』で、感染力は弱いし、ヒゼンダニは、もし体からポトッと床に落ちるとすぐに死んじゃうから、そういうことではうつらない」とおっしゃるではないか。ほっ!
疥癬には「通常疥癬」と「角化型疥癬」がある。通常疥癬は、ある程度長い肉体的接触、たとえば、介護で手を長い間つないだり、介助したりすることから感染するのがほとんど。入院している病院や介護施設で感染することが多いという。潜伏期間は1~2か月で、複数の病院に入院したし、通所もしているので、感染経路はすでにわからない。
一方の角化型疥癬の場合は、体内にヒゼンダニが100万から200万匹もおり、症状も感染力も強い。短時間の接触や落ちた角質からも感染の可能性があるそうで、こっちだったら、うちの大掃除と消毒など、すごく大変だっただろう。通常疥癬でラッキーだったと思おう。
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父娘で飲んだ「ダニを殺す薬」
その場で私の皮膚も診てくれたが、幸い感染していなかった。まぁ、私が父の手をとることはそうないから大丈夫だとは思っていたが、やはり安心した。ただ、念のためにヒゼンダニを殺す薬を私も飲むことになった。父はその薬をその日に飲み、1週間後、卵がかえったタイミングでもう一度飲んだ。そのほか、かゆみを抑える薬を飲み、「オイラックスクリーム」を体中に塗って、毎日1本使い切ることに。そして、感染を防ぐために、家でも外でも手袋をすることになった。
ショックだったのは、それまで約2か月塗っていたステロイドは逆効果だったことだ。ヒゼンダニが体内にいるときに使うと、疥癬の症状が悪化するという。まったくもってひどい話だ。せめて前の病院を2度目に受診したとき、もう一度きちんと診てくれていたら、ここまで悪化しなかっただろうに。私も不信に思った時、面倒くさがらず、他の病院にさっさと行けばよかった。ちょっと反省。
「通常疥癬だって」とケアマネさんに伝えると、向こうもショックを受けていた。なぜなら、通常疥癬は感染力が弱いとはいえ、その小規模多機能の事業所でも「通所禁止」になる病気だったからだ。父は発病から約2か月間通所し、お風呂にも入れてもらっていた。本当に申し訳ない。ただ、幸いなことに、通所している方たちにも職員にも同じ症状は出ていないという。
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