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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと

コラム

見た目の若さは体の若さ

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2017年にはコーディネーターの加藤タキさんにアンチエイジング大賞特別賞を授与

 アンチエイジングの“布教”を始めて気がついたのは、アンチエイジング、抗加齢という言葉の受け止め方が人によってさまざまだということです。そして、中には「アンチエイジング大嫌い」という方もおられます。老化は自然現象、それにあらがうのはどうかというお考えです。結論から言いますと、我々は何も「不老不死」を目指すわけではない。平たく言えば「健康長寿」、そして老いと上手に付き合うのがアンチエイジングの目標です。
 正しい医療情報の提供を目的にしたNPO「アンチエイジングネットワーク」を運営していますが、2007年に「いいとし」という語呂合わせで、11月14日を「アンチエイジングの日」と定めました。その前後に市民講座を開催し、アンケート調査に基づいて、アンチエイジングにふさわしい方々に「アンチエイジング大賞」を差し上げてきました。

「年齢は記号にすぎない」と言いたいが

 最初の頃に受賞したある人気女優さんからは、「アンチエイジングなんて大嫌い。年齢なんか記号にすぎないでしょ」と言われました。なかなか格好いいですね。それでも大賞は受けてくださいました。「抗加齢」といっても何も肩肘張って闘うのではなく、老いといかに折り合いをつけるか、できれば老いの歩みを少し遅らせるという考えだとご説明差し上げた覚えがあります。最近、何かの会で同じ食卓になり、10年ぶりにお顔を拝見すると、年齢という記号もバカにはできないな、と感じましたが感想は控えておきました。

見た目が若い方が長生き

 ところで人は誰でも二つの年齢を持っています。一つは「暦の年齢」で、生まれた時に定まり、1日も変えることはできません。加齢という言葉は狭い意味ではこれを意味すると言えましょう。我々が取り組んでいる「老い」は、加齢に伴う老化であり、「生物学的年齢」と呼んでいます。人によっては「リアルエイジ」とも言います。「暦の年齢」は同じでも、「生物学的年齢」は人さまざまです。
 「老い」は自然現象であることは間違いありませんが、その人のライフスタイルが大きな影響を及ぼします。そのことを立証する研究が数年前、デンマークから発表されました。それは数百人の一卵性双生児をフォローし、見た目の若さと健康の度合いの関連を調べたものです。

 一卵性双生児ですから、DNAが全く同じということは、遺伝的素質がイコールということなので、何か違いがあればそれは環境因子、つまりその人のライフスタイルによるということになります。そしてわかったのは、若く見える方が健康で長生きするということでした。ある意味でこれは当たり前と言えるかもしれませんね。皮膚、容貌など見た目は体の一部で、体が若ければ当然見た目、つまり容貌や表情などが若くても当然です。

老化について遺伝の関わりは3割

 というわけで、老化が自然現象としてもそれへの遺伝の関わりは3割程度で、あとはその人のライフスタイル、つまり努力次第ということになります。僕が日本抗加齢医学会の分科会として「見た目のアンチエイジング研究会」というのを立ち上げたのもそのためです。
 その人の「生物学的年齢」の指標の一つとして「見た目年齢」を取り入れる。いろいろ高価な、また負担の大きな検査をせずとも、「見た目年齢」は一目見ただけで決まります。その改善を努力目標として、抗加齢に励めば見た目が若返るだけでなく、全身の若返りにもつながります。何と言っても女性にとっては、見た目の若さが大きな関心事ですから。
 最近のスマホの顔面認識機能は恐るべきものがあります。これをもとに見た目年齢を割り出すアプリを開発すれば、各人が鏡を見る以上に自分の老化度を知ることができるでしょう。
 ところで最初の「アンチエイジング」という言葉の問題に返りましょう。我々も老いは自然現象としてそれと争うのではないので、それならばもっと良い呼び方はないかと、学会発足当時から折に触れて議論を重ねてきました。
 いわく「サクセスフルエイジング」。曰く「ウエルエイジング」。ですが、どれもあまりピッタリ来ません。それだけアンチエイジングに馴染なじんでしまったのなら、これからもアンチエイジングで行くしかないか、中身さえ正しく把握されればと考えるようになりました。

加齢に抗う気持ちは不可欠

 ただ、米寿を迎えるあたりから、僕自身の考えは少し変わってきました。老化と折り合いをつけて、など生ぬるいことを言っていると老いに負けてしまう。ここはやはり闘う覚悟が必要だと。抗加齢の基本はバランスのとれた食事と適度な運動と我々は説きますが、例えばその最低線とされる週3回20分の散歩、そして腹八分の食事にしても、やはりそれなりの努力が必要です。つまり加齢に抗う気持ちが不可欠というのが、僕の今の認識です。
 皆さんはいかがお考えでしょう?
                                       (塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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