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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

コラム

「このお婆さんを運ぶのは、この方のためになっているのか」 漏れた救急隊の本音

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最終章の医療 みんなで考える空気が広がり出した

 日本尊厳死協会は、人生の最終章における延命治療について、選択の自由を国が認めるように運動を続けています。しかし、医療の制限につながると反対する意見もあり、議員立法は成立していません。そこで厚生労働省は昨年3月、終末期医療のガイドラインを改訂しました。最終章まで生きた人に医療をどう適応するか、関係する人が皆で考えて、相談しなさいと。

 今、その空気が広がり出しました。いつまでも生きられはしないと誰にもわかっているのですが、最期が来ると迷うのが人間です。しかし、もう役に立たないのに延命治療を押し付けても、本人を苦しめるだけだと多くの人がわかってきました。

「世のため、人のためになりたいと、この世界に入ったが……」

 現に、救急隊の人も本音を吐露し出しました。

 私は思い出すことがあります。拙著「平穏死のすすめ」を出して4、5年たった頃でした。芦花ホームを管轄している消防隊の隊長さんから電話が入りました。「今度、隊員の勉強会をします。先生、講師として来てくれませんか」。私はピンときました。これは何をおいても行かなければと、その場で承諾しました。

 前半は、私が特養での実情をお話しさせていただきました。その後は消防隊員の発表が続きました。それこそ、本音が次々と出ました。「また、このお (ばあ) さんを運ぶのか。これは、この方のためになっているのか」と思うのだそうです。「自分たちは世のため、人のためになりたいと思って、この世界に入りました。そして、今の東京、私たちがすぐに助けなければならない、様々な事態が起きています」と。

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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1件 のコメント

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目の前の緊急事態の予測と準備と制度改革

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

こう言う記事を見ると、一般的な研究業績がないどころか、研究機関に所属さえしていない自分が学会や研究会でひたすら勉強していることの意味を考えさせら...

こう言う記事を見ると、一般的な研究業績がないどころか、研究機関に所属さえしていない自分が学会や研究会でひたすら勉強していることの意味を考えさせられます。
たまにお叱りを受けますが、研究内容は社会に活かされてこそ意味があるので、研究成果を他科医や他業種の目から再定義して、新聞投稿を通じて一般の目に触れさせるという仕事は医療の均てん化(標準医療の向上)に重要なのではないかと思います。

自分は先生のように世の為人の為で医者になったわけではないですが、目なり、手なり、人と違う医療の仕事が出来なければ、やる気がある新人より使えないという危機感はあります。(進学校や進学塾で保護者や教師の要求と自分の意思や猶予期間とのジレンマに苦しむ若者にも知ってほしいことで、よくある話。)

折角の最先端研究を自分の考える意味と意欲でしか考えられないと広がりません。
末端の患者さんや一般医師、他科医の動線まで含めて、再構築できれば、より多くの患者さんが利益を得ることができます。
お金もそうですし、お金に代えられない話もあります。

本文のような話はよくありますが、その患者さんにとっての医療行為の無駄だけでなく、救急隊の人員や時間が奪われたことも見逃せません。
そのマンパワーや休憩時間、余剰兵力が、その社会人の家族や友人も含めて、どれだけ多くの人を幸せにできるか?

もしも、あらかじめ、診断がついていて、想定される救急疾患が絞り込まれていて、それに対する説明と意欲の確認が済んでいたらどうでしょうか?
勿論、文字にするのは簡単で、実行フェーズでは様々な問題もあります。
多くの市民を動かす意見、お金、政治、など。

日本がん分子標的治療学会ではリキッドバイオプシーという微小物質からのがん診断を聴講しましたが、画像診断も含めて、がん以外の疾患や消化管以外の臓器もまとめて検査の網にかければ、多くの患者さんを効率よくフォローできるでしょう。
治療を望まない人も含めて、検査は少し過剰でも、データの欲しい企業や研究機関が上手に買い取れる制度を構築すれば三方よしになると思います。
なぜなら、死亡までの予後予測の精度が上がれば、それだけ、さまざまな準備や心残りの排除ができるからです。
治すだけが医療ではなく、心残りを減らす手伝いも医療です。
死に目に遭えなくても、死期の近くで会えることには社会的な意味もあるでしょう。
そのためにも、それがほどほどに儲かって中長期的に続く仕事に変えてやる必要があります。

AIの進歩も含めて、治療よりも診断技術の方が技術革新の恩恵を受けやすく、今後、地域中核病院あるいはその診断部門を電車の利便性のいい場所に配置することで、より効率的な医療の運用に繋がると思います。
今は都市部の家賃や駐車場代の高騰で、若手医師もクルマを持ちづらくなっていて、勤務体系や経費制度の多様性と共に、自家用車のない人間への配慮が非常勤も含めた地域やへき地の医療体制において重要になってくると思います。
(一人の医師に多くの責任を被せるべきではなく、遠隔サポート共に、都会並みに先端医療を学びやすい環境も必要になります。)

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