著名人インタビュー
もっと知りたい認知症
[女優 松原智恵子さん](下)家では4歳上の夫に甘えてばかり 「私より先に死なないで」
家族の命の選択を迫られたら…
――映画「長いお別れ」では、認知症という重いテーマを扱いながらも、明るく、穏やかに時が流れていきます。ところが終盤ではいよいよ昇平の病状が悪化し、本人の意思が確認できないために、家族が人工呼吸器を付けるかどうかを決めなくてはならなくなりました。
この場面では、娘たちが「お父さんは望まない気がする」なんてことを言います。それを聞いた曜子が、「勝手なことを言わないで。お父さんの考えが、なんであんたたちにわかるの!?」と声を荒らげます。
ずっとニコニコと優しく笑っていたお母さんが、たった一度だけ怒るシーンですよね。監督からは「ここはバシッと、しっかり言ってください」と言われたのですが、普段の生活では大きな声を出すことがほとんどないので、慣れてなくて。一生懸命、声を振り絞りました。
――1日でも命を延ばすことを最優先にして、できる限りの医療処置を施すのが当たり前という時代もありましたが、近年は「寝たきりでチューブにつながれて少しでも長く生きるより、自然で穏やかな最期を迎えたい」と考える人も増えています。
娘たちの発言は、そういう世の中の流れを意識したのかもしれませんが、長年連れ添ってきた妻としては、どんな決断であっても、自分の身を切られるような思いで下しているのです。それなのに娘たちが勝手なことを言うので、たまらなくなって声を上げてしまったのだと思います。
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