文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

「赤ちゃんが泣き止まない」 どうすればいい?…夜泣きへの対処法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 子どもの病気やホームケアの啓発を行う「教えて!ドクター」プロジェクトを始めて、今年で5年目になります。私たちのウェブサイトに検索でたどり着く方で、圧倒的に多い検索ワードがあります。何かお分かりでしょうか?

 それは「赤ちゃん 泣き () まない」です。「新生児 泣き止まない」と合わせると、2位のワードの2倍以上にもなります。

 試しに、インスタグラムのハッシュタグで「#夜泣き」と打ってみたら、投稿件数はなんと9万件に達していました。赤ちゃんが泣き止まないことにしんどい思いを抱えている保護者が、いかに多いかが分かります。そこで今回は夜泣きについてお話しします。

イラスト:江村康子

イラスト:江村康子

夜泣きの原因は分かっていない

 夜泣きの定義に、医学的に明確なものはありません。辞書を引くと、「夜、赤ん坊や幼い子どもが泣くこと。毎夜くせのように続くことが多い」(三省堂 大辞林)とあります。

 もっとも、一言で夜泣きといっても、大きく二つに分かれます。

 一つは、生後2~3週くらいから特に理由がなく泣くものです。夕方から夜にかけてが多く、 黄昏(たそがれ) 泣きともいいます。外国では、コリックとかPURPLE CRYING(パープル・クライング)と呼ばれます。これは、生後3~4か月で自然に消えていきます。

 もう一つ、生後4~6か月くらいから3歳くらいまで、夜になると何度も目覚めて泣くものがあります。特に、こちらの方を「夜泣き」と呼ぶこともあります。これも明確な原因は分かっていませんが、睡眠サイクルがまだ不安定なことと関係しているのでは、と考えられています。いずれも赤ちゃんにとっては自然な経過で、正常な発達の範囲内です。

 それでも、なかなか泣き止まなかったり、一晩に何度も夜泣きを繰り返したりすると、眠りを妨げられるお母さん、お父さんにとっては、大きなストレスになります。

 では、どうすればいいのでしょうか。ポイントは、意外かもしれませんが、「何をやっても泣き止まないことがあると知ること」です。順に説明したいと思います。

「母乳やミルクが飲めない」「活気がない」場合は病院へ

 赤ちゃんは、不快感や不安などの感情を言葉や動作でうまく表現できないため、泣き出したりぐずったりします。具体的には、「眠い」「お (なか) がすく」「驚いたり怖かったりする」「周囲がうるさい」「かゆい」「おむつが汚れて気持ち悪い」「暑い」「寒い」などです。泣いたときは、何かの欲求が隠れていることがあるので、まず一通り試してみることになります。

 (1)授乳する(2)おむつを替える(3)抱っこしてトントンする(4)話しかけたり歌を歌ったりする……などを試したり、(5)おむつかぶれがないか(6)服がきつかったり暑がっていたりしないか……なども確認します。乳歯が生えかけなのかもしれません。もし、機嫌が悪く、顔色が普段と違っていたり、ぐったりしている場合、哺乳ができないようなら病院で受診する必要があります。元気に泣いているのであれば、通常は病院へ急ぐまでもないことが多いです。

昔の人の知恵「疳の虫」

 いろいろと試しても原因が分からず、何をやっても泣き止まないとなれば、途方に暮れますよね。実際、泣いている原因がよく分からないことは多いのです。まずは、そのことを知ってください。

 「泣き止ませられない自分は、親失格なのではないか」「私を嫌っているんじゃないか」と、打ちのめされてしまう親御さんもいると思いますが、そうではないのです。「ママなら泣き止ませられるはず」なんていうことはありません。一通りのことを試したら、原因を追究しすぎず見守りましょう。

 ちなみに昔の人はそんなとき、「 (かん) の虫」という架空の虫のせいにしてやり過ごしました。親のせいでも、赤ちゃんのせいでもない。虫のせい。そうすることで、結果的に誰も傷つかない。昔の人の知恵と優しさが垣間見えます。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190204-msakamoto-prof200

坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

「教えて!ドクター」の健康子育て塾の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事