なが~く、楽しくお酒と付き合うために 重盛憲司
医療・健康・介護のコラム
一気飲みだけじゃない、急性アルコール中毒の危険
お酒は快感で嫌な記憶を上書きするため!?
二つ目のリスクは、アルコールに依存する傾向が生じることです。
皆さんは、嫌なことを忘れるためにお酒を飲みたいと思うことがありませんか?
例えば、人間関係で悩んでいる時や、仕事で失敗した時などです。このような時には、お酒を飲んでリラックスするだけでは飽き足らず、より深い「酔い」を求めて深酒になる傾向があります。
お酒を飲むことで、リラックスしたり、ほがらかになったりするのは、アルコールが脳の理性を司る部分(大脳皮質)を麻痺させ、感情や本能を司る部分(大脳辺縁系)の働きが活発になるためです。仕事を頑張った自分へのご褒美や、仲間と楽しくお酒を飲むのならば、これだけで十分といえます。
ところが、アルコールは脳の一部の働きを麻痺させるだけではなく、ドーパミンという快楽物質を増やし、中枢神経を刺激します。お酒を飲むことにより 酩酊 し、快感を味わうのはこのためです。
連続的にアルコールによる刺激を与えていると、脳がその刺激に慣れてしまい、快感を得るために必要なアルコールの量が増えていきます。これを耐性といいます。したがって、「嫌なことを忘れるためのお酒」の場合、快感によって嫌な記憶を上書きすることが飲酒の目的になっていますので、現実の「嫌なこと」が解決できない限り、酒量が増加し、アルコールに対する依存の度を深めることになります。
以上、二つの“酔い”のリスクを熟知することが、お酒とうまく付き合う秘訣となると思います。
よく、「ほろ酔いになる程度がちょうどいい飲酒量で、目安はビール〇杯分」などという表現をしますが、ほろ酔いになる飲酒量というのは千差万別で、非常に個人差が大きいです。これは、先ほど述べたアルコールの分解速度とも関連するのですが、コップに半分程度のビールを飲んだだけで、顔が真っ赤になってしまう人もいます。このことをよく覚えておいて、「無理に飲まない・飲ませない」というルールを守ることが大切です。
この連載では、これから酔いや依存の特徴について、もう少し詳しく述べていこうと思います。それから、「己を知る」という点では、人はなぜ酔いたいのか、酔い続けたいのかについても触れていく予定です。(重盛憲司 心療内科・精神科医)
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