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[性同一性障害から性別不合へ](下)私は男でも女でもなかった…50代母が探し当てた「本当の自分」

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自分に対して素直に「ごめんね」

――ジェンダークリニックでの診察とは、具体的にどんなことをするのですか。

 メインは自分史を書くことでした。「出生~小学校入学前」「小学校低学年時代」といった感じで、その時代の写真を用意し、その時に感じていたことを文章にしていきました。過去の自分の写真を眺め、その時の自分を思い出しながら自由に文章を書いていくこと自体、私にとっては大きな癒やしになりました。

 先生が、いくつか質問をします。性について、自分が感じていることを包み隠さず話せる環境があるというのは、大きいことだと感じました。「それでいいんですよ」と受け入れてもらえることで、ずっと向き合えていなかった自分を、だんだんと受け入れていくことができました。そして、自分に対して素直に「ごめんね」という気持ちがわいてきたんです。

――なるほど。

 仕事や家庭に支障が出ない範囲で自分と向き合いたいと考え、2か月に一度のペースで診察を受けました。診察の過程で、自分が男性に性的魅力を感じたことがないことに気がつき、勇気を出してレズ風俗にも行ってみました。

―すごい行動力ですね!

 われながらそう思いました。やっぱり体験してみないと、わからないことはあります。私にとっては、男性より、女性とのセックスの方が自然でした。「本当は左利きなのに、右利きだと思い込もうとしていたんだ」と、そんなふうに感じました。

 50代になって、やっと自分がセクシャルマイノリティーだと気づいたんです。そう気づくと、急に社会から放り出された気もしました。「好きでこう生まれたんじゃないのに、この事実は、私一人で受け入れないといけないのだろうか?」と、自分をそういう立場に追いやっている社会全体に対して猛烈な怒りを感じました。

人生100年時代 これからは自分らしく

――強烈な体験だったんですね。

 最初は、パンドラの箱を開けてしまった感じでした。「どうしよう。私、男性に性的魅力を感じないのに、結婚して子どもまで産んでしまった。夫にも、子どもにも、本当に申し訳ない」と、1年くらいは混乱していました。

――今は、どうですか。

 もう落ち着きました。「夫と結婚したということと、男性に性的魅力を感じないということを結び付けて考えなくてもいいのかな」と考えるようになりました。「大切な人から切実に求められているという意味では、夫とのセックスは授乳と同じかな」とも。

 私自身としては、50代で自分と向き合えてよかったと感じています。人生100年時代、50代はまだ中間地点です。後半の50年、「自分は、何者なのだろう?」ということがわからないまま生きるのは、つらすぎますから。

 *本人が特定できないようにプロフィルは加工しています。

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