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[性同一性障害から性別不合へ](上)男か女かの「性別二元論」では語れない人たち 「ノンバイナリー」とは何か?…松永千秋・GID学会理事に聞く

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「違和感」を一緒に解明

――そうした患者さんには、どのような対応をされるのですか。

 患者さん自身が、自らの性のあり方に気付き、受け入れられるよう手助けしていきます。性同一性を「自我同一性」に統合する手助け、とでも言えばいいでしょうか。

 戸籍上の性に違和感を持っているなら、「それはどういう違和感なのか」「その人の性のあり方はどうなのか」を、一緒に解明していく。そのためには、これまでの人生について、生い立ちからお聞きしていきます。話すうちに、だんだんと整理されていくのが最も望ましいですね。

 医師は、それに寄り添う。それ以外のことはしないよう、誘導することがないよう、心がけています。「性別不合とはこういうものだ」といった固定観念を持って診察をすると、かえって患者さんを救うのが難しくなりますから。

――診断基準が変わることにより、どんな効果を期待されていますか。

 これまでは、性に違和感を抱く患者さんを治療するため、無理に性同一性障害に当てはめてしまうケースもありました。不要な手術がなかったとは言えません。患者さんの側も、治療を受けるため、無意識に「自分は性同一性障害だ」というフィクションを作り上げてしまう危険がありました。性別不合へと診断基準が変わることで、こうしたことがなくなり、ノンバイナリーの人たちが適切な医療のサポートを受けられるようになってほしいと思います。

――乗り越えるべきハードルも多いのでは?

 もちろんです。医療者の側が、正しい知識と技術を持たなければいけないし、将来的には身体的治療に対して保険適用もされるべきだと思います。また、多様な性のあり方を尊重するという面では、医療だけでなく、ICD-11を根拠として、教育や就労、福祉にかかわる施策も改善されていく必要があります。 

性のあり方は人それぞれ

――いま自分の性について悩んでいる人に伝えたいことは何ですか。

 私自身、病院で性同一性障害の専門外来を担当していた勤務医時代にカミングアウトし、その翌日から女性の姿で診察に当たった経験があります。変な目で見る患者さんはいませんでした。精神科の診察では、患者と医師の信頼関係は深く、見た目の変化は問題にされませんでした。

 性のあり方は、人格のあり方がそうであるように、人それぞれであっていい。性に対して、もっと自由に考えられる人が増えていくといいですね。

松永 千秋(まつなが・ちあき)
精神科医、ちあきクリニック院長
東京都出身。早稲田大学で物理学を学んだのち、医学へ。自身が性別の問題に悩んだことから精神医学を志す。浜松医科大学大学院修了後、米国立衛生研究所(NIH)、ジョンズ・ホプキンス大学で研究生活を送る。帰国後は浜松医科大学精神科講師などを経て、2003年4月より日野病院副院長。12年10月、ちあきクリニックを開設。GID(性同一性障害)学会理事、日本精神神経学会精神科病名検討連絡会委員、同学会性同一性障害に関する委員会委員

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