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[性同一性障害から性別不合へ](上)男か女かの「性別二元論」では語れない人たち 「ノンバイナリー」とは何か?…松永千秋・GID学会理事に聞く

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 2019年5月の世界保健機関(WHO)総会で承認された診断基準「ICD-11」では、「性同一性障害」の名称が「性別不合」に変更された。その背景の一つには、男か女かの「性別二元論」に当てはまらない「non-binary(ノンバイナリー)」の人たちの存在が明らかになってきたことがある。ノンバイナリーとは何か?……GID(性同一性障害)学会理事の松永千秋医師に聞いた。(聞き手・梅崎正直)

「男か女か」のくくりでは苦しい

――WHO総会で新しい診断基準「ICD-11」が承認され、「性同一性障害」の呼称は「性別不合」へ変わることになりました。そこには、どのような意味があるのでしょうか。

 一つは、「病気」や「障害」としてとらえるのではなく、多様な性のあり方を尊重しようということ。そして、もう一つには、性の違和感を訴える人の中に、「男」と「女」という二つの性には当てはまらない「ノンバイナリー」と呼ばれる人が少なくないことが、臨床現場からの報告で分かってきたことがあります。

 性同一性障害の診断概念には「反対のジェンダーへの同一感」があります。典型的には小さい頃から一貫して、戸籍上の性への違和感を持ち、反対の性になりたいと感じ続けているケースです。しかし、現実には「戸籍の性には違和感があるけれど、反対の性への移行は望んでいない」という人が少なくありません。こうしたノンバイナリーの人たちは、たとえ深く悩んでいても、医療の対象ではないとされてしまっていたのです。

 目の前の患者に対応するためには、性同一性障害の診断概念では無理がある。そこで、13年に公表されたアメリカの診断基準「DSM-5」では、性同一性障害が「性別違和」に改められました。今回のICD-11の改訂も、同様な趣旨によるものです。

――先生のクリニックにも、実際、そうしたノンバイナリーの患者は多く訪れていますか。

 ノンバイナリーは、日本では「Xジェンダー」と呼ばれることもあり、最近はインターネットやテレビなどでも取り上げられ、知られるようになってきました。その影響もあり、患者さんは増えています。

 他の医療機関では、「気のせい」「勘違い」の言葉ですまされていた人もいます。何十年も悩んだ末、医師を訪ねたのに、「趣味のゴルフに没頭すれば、おさまりますよ」とアドバイスされただけだったという人もいました。

70代「このまま死んでいいのか?」と

――年配の患者さんもいらっしゃるのですね。

 戸籍上の性で男女を問わず、年齢層は広がっています。結婚をし、出産、子育てを経験した人も少なくありません。そうした人生のイベントを経験したことにより、自らの性への違和を確信することもあるようです。70代になって、初めて受診するという人もいました。

――70代ですか。

 社会人としての役割、夫や妻、父や母という役割を終えたとき、「このまま死んでいいのか?」と思うようになったそうです。

 「反対の性になりたい」という意思が明確な性同一性障害の人と違い、自分の性について「よく分からない」と言う人が多くいます。自分の性のあり方、悩みの正体について、語る言葉が見つからない。「自分は何なのだろう?」という状態です。

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