文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」

医療・健康・介護のコラム

「温泉行けた」「外出増えた」 乾癬患者の苦悩を吹き飛ばした生物学的製剤

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 こんにちは。皮膚科医のえんどこです。今回は、前回の話の続きです。

 さて前回、皮膚科を受診する患者さんは、皮膚に何らかの症状があるのが普通なのに、「特に何もないけど来ました」という患者さんがいたという話をしました。もちろん全く「何もない」ということではなく、「治療で良くなった皮膚をどうしても(私に)見てほしくて」と受診された女性のことです。

忘れられない 「喜色満面」の女性患者の笑顔

 「そんな患者さん本当にいるの?」と思うのは当然です。私もその時は「○○さんが受診している……。どうしたんだろ。また発疹がひどくなったのかな?」と思っていました。しかし、彼女が診察室に入って来た時の表情は全くの別物で、「こんな表情をする方だったのか!!」と驚くほどのとびきりの笑顔でした。もう10年近くも前の出来事ですが、今もあの笑顔は忘れられません。

 よく「喜色満面」とか「満面の笑み」といいますが、おそらくこの言葉は、こういう表情に対して用いるのだろうな、と思うほどの笑顔でした。喜色満面を辞書で引いてみると、喜色は「喜んでいる様子」「うれしそうな顔つき」、満面は「顔いっぱい」「顔じゅうに」という意味だそうで、合わせると「喜んでいる様子が顔いっぱい」、すなわち「喜びが心の中で抑えきれず表情に出ている様子」という意味になります。彼女の場合は、それだけにとどまらず、私のところに皮膚を見せに来るほどの大きな喜びだったというわけです。

体のあちこちに赤く盛り上がった発疹ができる乾癬

「温泉行けた」「外出増えた」 乾癬患者の苦悩を吹き飛ばした生物学的製剤

 彼女は、 乾癬かんせん という治療が難しい皮膚病の方で、大学病院(岩手医大病院=私の前年度までの勤務先)にも何回か入院したこともあります。当時としては、やれる治療は全てやりましたが、発疹の改善には程遠く、外来でも私に笑みを見せることはありませんでした。乾癬は、赤く盛り上がった発疹( 紅斑(こうはん) )が全身の皮膚のあちこちに出現します。

 それだけでも十分にストレスなのに、さらにやっかいなのがこの赤い発疹の上にフケのようなカサつき( 鱗屑(りんせつ) )が伴うことです。このカサつきは、きれいに剥がし落としても、翌日にはもう新たなカサつきが作られています。どんどん作られるので自然と剥がれ落ち、部屋中がカサつきだらけで汚れてしまいます。

スーツの肩がフケのようなカサつきだらけに

 発疹が頭部にあれば、スーツの肩のあたりはカサつきだらけになります。決してフケではないのですが、営業職の方などであれば、やはり良い印象は与えません。必然的にスーツは黒や紺色といった色調は避けるようになります。女性であればスカートも敬遠しがちになります。人目を気にして、夏でも半袖を着ない患者さんが多いです。

 ここまで読むと「乾癬って、一体どんな皮膚病なんだ?」と思われる方も多いでしょう。ただ、日本人の0.4%、すなわち250人に1人の割合の皮膚病なので、学校や職場、電車の中や温泉などでおそらく一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。もちろん発疹の重症度によっても違いますから、気づかないだけかもしれません。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190219-kendo-prof200

遠藤 幸紀(えんどう・こうき)
皮膚科医。東京慈恵会医科大学皮膚科講師。乾癬かんせんという皮膚疾患の治療を専門とし、全国の乾癬患者会のサポートを積極的に行っている。雑学やクイズに興味があり、テレビ朝日「Qさま!!」の出場歴も。

Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

尋常性乾癬患者です

ぁゅまま

もともと皮膚の弱かった私は、出産を機に尋常性乾癬(かんせん)を発症しました。今から17年前のことです。発症時は、アトピー性皮膚炎か何かではないか...

もともと皮膚の弱かった私は、出産を機に尋常性乾癬(かんせん)を発症しました。今から17年前のことです。発症時は、アトピー性皮膚炎か何かではないかと思い、アトピー治療で有名な病院を受診したところ「ただのストレス性皮膚炎です。一生治らないから治療は無駄です」と言われ、ショックを受けて帰宅したことを覚えています。出産のたびに悪化、全身にまで広がり、諦めていました。たまたま知り合った方から別の病院を紹介してもらい、治療が始まり、だいぶ良くなりました。しかし、完治にはほど遠く、生物学的製剤に切り替えましたが、合わないようで、また悪化しています。いつ終わるのか…先が見えない暗闇にいるようです。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事