Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」
医療・健康・介護のコラム
「温泉行けた」「外出増えた」 乾癬患者の苦悩を吹き飛ばした生物学的製剤
こんにちは。皮膚科医のえんどこです。今回は、前回の話の続きです。
さて前回、皮膚科を受診する患者さんは、皮膚に何らかの症状があるのが普通なのに、「特に何もないけど来ました」という患者さんがいたという話をしました。もちろん全く「何もない」ということではなく、「治療で良くなった皮膚をどうしても(私に)見てほしくて」と受診された女性のことです。
忘れられない 「喜色満面」の女性患者の笑顔
「そんな患者さん本当にいるの?」と思うのは当然です。私もその時は「○○さんが受診している……。どうしたんだろ。また発疹がひどくなったのかな?」と思っていました。しかし、彼女が診察室に入って来た時の表情は全くの別物で、「こんな表情をする方だったのか!!」と驚くほどのとびきりの笑顔でした。もう10年近くも前の出来事ですが、今もあの笑顔は忘れられません。
よく「喜色満面」とか「満面の笑み」といいますが、おそらくこの言葉は、こういう表情に対して用いるのだろうな、と思うほどの笑顔でした。喜色満面を辞書で引いてみると、喜色は「喜んでいる様子」「うれしそうな顔つき」、満面は「顔いっぱい」「顔じゅうに」という意味だそうで、合わせると「喜んでいる様子が顔いっぱい」、すなわち「喜びが心の中で抑えきれず表情に出ている様子」という意味になります。彼女の場合は、それだけにとどまらず、私のところに皮膚を見せに来るほどの大きな喜びだったというわけです。
体のあちこちに赤く盛り上がった発疹ができる乾癬
彼女は、
それだけでも十分にストレスなのに、さらにやっかいなのがこの赤い発疹の上にフケのようなカサつき(
スーツの肩がフケのようなカサつきだらけに
発疹が頭部にあれば、スーツの肩のあたりはカサつきだらけになります。決してフケではないのですが、営業職の方などであれば、やはり良い印象は与えません。必然的にスーツは黒や紺色といった色調は避けるようになります。女性であればスカートも敬遠しがちになります。人目を気にして、夏でも半袖を着ない患者さんが多いです。
ここまで読むと「乾癬って、一体どんな皮膚病なんだ?」と思われる方も多いでしょう。ただ、日本人の0.4%、すなわち250人に1人の割合の皮膚病なので、学校や職場、電車の中や温泉などでおそらく一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。もちろん発疹の重症度によっても違いますから、気づかないだけかもしれません。
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もともと皮膚の弱かった私は、出産を機に尋常性乾癬(かんせん)を発症しました。今から17年前のことです。発症時は、アトピー性皮膚炎か何かではないかと思い、アトピー治療で有名な病院を受診したところ「ただのストレス性皮膚炎です。一生治らないから治療は無駄です」と言われ、ショックを受けて帰宅したことを覚えています。出産のたびに悪化、全身にまで広がり、諦めていました。たまたま知り合った方から別の病院を紹介してもらい、治療が始まり、だいぶ良くなりました。しかし、完治にはほど遠く、生物学的製剤に切り替えましたが、合わないようで、また悪化しています。いつ終わるのか…先が見えない暗闇にいるようです。
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