文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

その目の不調は脳が原因…心療眼科医の“謎解き” 本に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
その目の不調は脳が原因…心療眼科医の“謎解き” 本に

 拙著『心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因』(集英社新書)=写真=が、近く 上梓(じょうし) されます。

 「ものは目で見ているのではない、脳で見ているのだ」ということは、よく考えてみれば当たり前です。それなら、見えにくい、見えない、すぐ疲れる、おかしな見え方だ、といった眼科の外来にやってくる大勢の人たちのそういう訴えを、眼球の診察だけで理解しようとしても無理があるとも思うはずです。

 でも、実際には、医師も患者も、目に異常があるはずとの前提から抜けられず、眼科医としては、眼球に異常がないと、目は正常だから大丈夫、気にしない、気にしすぎ、気のせいだ、といった対応になってしまいます。

 そう言われた患者は、症状が持続すれば、落ち込んで引きこもるかもしれません。でも、どうしても納得がいかない人は、医療機関を転々とするでしょう。そういう人たちの一部が、私たちのような神経眼科、心療眼科を探し当てます。私の外来には、精神的にもふらふらになってたどり着く患者が絶えないのです、それはなぜなのでしょう。

 視覚の不調を目だけでなく、脳の機能も一緒に考えて謎解きをしようとする医師が、少ないからでしょう。そうだろうと考えても、それを患者にうまく説明してあげられないのかもしれません。脳の何らかの問題かもしれないと、中には、頭部のMRI(磁気共鳴画像)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査をする医師もいます。またそれを、患者が望むこともあります。

 しかし、MRIやCTによる検査は、脳の機能を見ているのではなく、脳の形に変化があるかどうかを見ているだけですから、診断画像は、大半の場合は正常に表れるのです。画像に表れないから脳機能に異常がないというのは大雑把すぎて、はやとちりだということは、本書を読めばよくよく分かるように書きました。

 もちろん、私の外来に来れば、どれも治療可能で、魔法のように解決するなどと豪語するつもりはありませんし、むしろ反対で、脳の誤作動なら、眼鏡や目薬、内服薬、手術で容易に治るはずはありません。

 目は大丈夫と言われても、原因が分からなければ、日々、不快な生活を余儀なくされ、将来どうなるかといった不安も高じ、 悶々(もんもん) とするばかりでしょう。周囲の家族や友人も困り果てるでしょう。

 神経眼科、心療眼科の目で見ると、治療はできない(あるいは必要ない)かもしれないが、どういうメカニズムでその目の不調が起きているのか、推定できるものがたくさんあります。本コラムで取り上げた話題も本書には入っていますが、まだ取り上げていない例も満載しています。一般の方だけでなく、世のファミリー・ドクター(家庭医)の方々にも読んでもらいたいのです。

 医師にも社会にも理解されにくい目の不調は、仕事や日常生活に大きな支障を生み出しています。なのに、国のセーフティーネットにはかからないという視覚障害の福祉の弱点も、本書の裏のテーマとして考察しています。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

心療眼科医・若倉雅登のひとりごとの一覧を見る

最新記事