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大人の健康を考える「大人び」

コラム

患者力(11)見抜けなかった妻のがん

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  このシリーズでは、元和歌山市医師会長で、田中内科医院(和歌山市)院長の田中章慈さん(71)に聞きます。(米井吾一)

患者力(11)見抜けなかった妻のがん

 この連載では、患者も病気の治療に積極的に参加する「患者力」の大切さを語ってきました。がんが見つかった時には打つ手がないということもあるけれど、少しでも体が楽になるように自ら努力することが大切なのだとも言いました。私がそう強く思うようになったのは、4年前にこの世を去った妻の存在があります。大腸がんでした。

 妻は毎年、がんの検診を受けていました。腫瘍マーカーなどの検査結果に異常はなく、自覚症状といえば背中に痛みがあった程度で、それも過去の圧迫骨折のせいだろうと考えていました。これがもし腹痛だったら、おかしいと気付くことができたかもしれないのですが……。

 2015年春、いきなり食欲が落ちて栄養が取れなくなり、コンピューター断層撮影法(CT)で調べた結果、末期の大腸がんとわかりました。全身に転移したがんを取ることは難しく、少しでも栄養が取れるようにするため腸内の通りを良くする手術をしました。この手術で体力が回復することを期待しましたが、術後の状態は悪く、そのまま集中治療室(ICU)に入ることになりました。

 「すぐそばにいながら、なぜ見抜いてやれなかったのか」。私は、妻の検査結果を何度も見返しました。強いてあげれば軽い貧血がありましたが、がんを疑わせるほどではありません。検診を受けていた病院の院長も結果を確認してくれましたが、同じ答えでした。

 こういうケースもあるんや、と自分に言い聞かせるしかありませんでした。

【略歴】
田中 章慈(たなか しょうじ)
1973年、和歌山県立医科大学卒。同大学助手を経て、和歌山赤十字病院第二内科副部長。85年、田中内科医院開設。2008年から13年まで、和歌山市医師会会長を務めた。日本臨床内科医会理事。

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