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石飛幸三の『人生の最期をどう迎えるか』

医療・健康・介護のコラム

「お前の目は腐ったサバの目だ」 小学校の厳しい恩師に学んだ人の生き方

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熱心な仏教徒だった親父 ひざの上で聞いた蓮如さんの御文章

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 私は人一倍、怖がり屋でした。実家は呉服の老舗。江戸時代、建物の間口で商家の税が決まりました(間口税)。奥行きには制限がなかったので、建物が細長いのが昔の商家の習わしでした。間口はせいぜい10メートルでしたが、奥行きは裏を流れる川の手前まで約100メートルもありました。途中には築山つきやまがあって、長い廊下が一番奥の離れ屋まで通じており、途中にはかわや(便所)とお風呂がありました。子供の頃、夜一人で厠に行くのを怖がって、 親父(おやじ) に叱られたものでした。

 そんな私も今、83歳です。親父は同じ年齢で逝きました。熱心な仏教徒で、私は親父のひざの上で、蓮如さんの御文章「 (あした) には 紅顔(こうがん) ありて夕べには白骨となりぬ」(人の生死は予想できない、世は無情である、などの意味)を聞かされて育ちました。

古希を迎えた教え子に88歳の恩師が伝えた「学究の志」

 日山先生は88歳の時、古希を迎えた我々教え子に、表紙に「えん」と大きく自筆された冊子を贈ってくれました。「●」というのは「墓に行く道」、転じて「終生学究の志の意」だそうです。

 日山先生は1959~60年の安保闘争に参加し、東京で東大生だった (かんば) 美智子さんの死に遭遇しています。人生のはかなさ、虚しさを感じられ、広島への帰路に京都で途中下車され、お寺に参られたそうです。後に校長も務めましたが、叙勲は断り、山家に 蟄居(ちっきょ) して仏教の勉強に励んでいました。先生が下さった冊子「●」の原点は、この辺りにあるようです。先生は89歳で逝去されました。

 私には、日山先生の生き方と、前回のコラムでふれた、「病院死」を拒否して入水自殺した評論家の西部邁さんの生き方が重なって見えます。(石飛幸三 特別養護老人ホーム常勤医)

 ※文中の●は「つちへん」に「延」

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石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大学医学部卒。ドイツのフェルディナント・ザウアーブルッフ記念病院、東京都済生会中央病院で血管外科医として勤務。プロ野球投手の手術も多く手がけた。2005年12月より、世田谷区立特別養護老人ホーム・芦花ホーム常勤医。10年に「平穏死」を提唱し、反響を呼ぶ。著書に「『平穏死』のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか」(講談社)、「『平穏死』という選択」(幻冬舎ルネッサンス新書)、「『平穏死』を受け入れるレッスン」(誠文堂新光社)、「穏やかな死のために 終の住処 芦花ホーム物語」(さくら舎)など。

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