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「しばらない」病院(6)患者が安心できる「宿屋」

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「しばらない」病院(6)患者が安心できる「宿屋」

 医療者側の視点を患者に押しつけず、「しばらない」。その理念が、現代の精神科医療に投げかけるものは何か。まきび病院院長の一色隆夫さんに聞いた。

 ――1981年の開設時、精神科医療の状況は。

 東京五輪開幕を控えた64年、米国のライシャワー駐日大使が精神疾患の治療歴がある19歳の青年に刺される事件が起き、精神障害者を危険視する論調が社会にあふれます。

 精神科病院は事実上、患者を社会から隔離する「収容施設」でしたが、事件は、それを見直すきっかけを失わせました。日本の精神科病床は、世界で突出した30万床超に急増します。患者が病院を出て、地域で暮らす体制づくりを進める欧米の潮流に完全に逆行するものでした。

 ――「閉鎖病棟がない」「身体拘束をしない」などの理念が生まれた理由は。

 病院は、困った人を隔離・拘束する場所ではない。患者が、安心して休める「宿屋」を創ろうとした結果です。宿屋ですから、入院も原則、本人の納得が前提になります。患者が地域で暮らすことが最も大切であり、入院中心という発想も持ちません。

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