ごぼう先生のイス健康体操2.0
医療・健康・介護のコラム
認知症の方が笑顔で働く「ちばる食堂」
介護の「ご」予防の「ぼう」でごぼう先生と申します。
2019年の4月に私が住む愛知県岡崎市に沖縄料理店がオープンしました。このお店のモデルは、メディアでも話題になった「注文をまちがえる料理店」(東京・六本木)です。認知症と診断された方たちが、スタッフとして笑顔で働いています。
「介護福祉士が営む沖縄そばとゆんたくのお店 ちばる食堂」
お昼に伺うと、「いらっしゃいませー」と元気の良い声が聞こえてきました。店長の市川貴章さんの声です。市川さんは介護福祉士として2002年から17年間、介護施設で働いてきました。
「ゆんたく」とは、沖縄の方言で「おしゃべり」という意味です。私自身、お店がオープンして1か月も 経 たない間に4回通っている自称常連ですが、居心地の良い空間と雰囲気に、ついついおしゃべりが止まりません。
そして「ちばる」とは、沖縄の方言で「頑張る」という意味。その店名には、「誰もが挑戦して、成長できる場所にしたい」との思いが込められています。お店から出るときは、とても 素敵 な表情のスタッフさんから「ありがとうございました!」と声と共に、元気をいただきました。
介護福祉士の可能性を広げたい
「できるんだけどな」。介護現場で働いていた時に、市川さんの口癖になっていた言葉です。
介護や支援を受けている方は、介護保険制度という枠に閉じ込められてしまっている方も多いのではないのか。制度の一部に疑問に感じていた市川さんの独立は、介護保険サービスではなく、専門学生時代に取得した調理師の免許を生かした飲食店でした。
地域の連携を生かして、開店前に地域包括支援センターなどの紹介で、認知症の60歳代から80歳代の男女4人を雇用しました。市川さんのブログには、表情と、行動が日々変わっていくスタッフさんの様子が更新されています。
https://ameblo.jp/cityriver8131/
働くことが本人の生きがいにつながり、店で接客するお客さんの認知症への理解も広がると期待する市川さんの思いは、東京・六本木で営業するなど、各地で単発的に開く「注文をまちがえる料理店」をモデルとしています。しかし、大きくモデルケースと異なるのは、決められた期間のみの営業ではなく、ちばる食堂は、水曜日と日曜日の定休日以外は、営業している飲食店ということです。
ただでさえ、経営が難しいと言われている飲食業界で生き抜くために、「ファンクラブ」というユニークな制度もあります。飲食店では、珍しい取り組みです。なんと、日本を超えて、ベトナムから会員になる!という声があったそうです。
認知症とは何か。再度、考えるきっかけになるお店
私の祖母は、二人とも認知症の症状があります。また、私自身、地域密着型デイサービスを営む経営者としても、日々、認知症症状のある方と生活を共にしています。
ちばる食堂に行くと、店内には「認知症」や「介護」という言葉を感じさせません。一番、しっくりくる言葉は、「人」です。
スタッフの皆さんは、チェーン店のようにマニュアルの言葉を話しません。自らの人生経験を生かした、自分の言葉で接客してくれます。ちばる食堂で 美味 しい食事をして、楽しくゆったりと過ごしてもらうために。
沖縄の音楽が響く居心地の良い空間には、もの忘れがあってもいいんじゃないかと、自然と心の器が広がっていく感覚になりました。
そして、いつしか自分自身が「認知症だから」「介護が必要だから」と、病名や薬、介護認定で「人」を見るようになっていたのではないかと、自分のちっちゃな心の器の軽重を問いかけられたような気がしました。
「認知症の人も、そうでない人も自由に生き生き交流できる地域になってほしい。料理店はその入り口でいい」という市川さんの思い。
新しい、介護福祉士の働き方。是非、ご注目ください。
それでは、皆様、お達者で。
お店情報
ちばる食堂愛知県岡崎市久後崎町キロ7-1
11:00~21:00
定休日:水曜日、日曜日
TEL:090-6092-0069
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