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水俣病 新たな語り部…62歳「体力の続く限り」

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5年9か月ぶり加入

水俣病 新たな語り部…62歳「体力の続く限り」

委嘱状を受け取った滝下さん(10日午後、熊本県水俣市で)=関屋洋平撮影

 水俣病の胎児性患者、滝下昌文さん(62)が10日、熊本県・水俣市立水俣病資料館の語り部を委嘱された。語り部の新加入は5年9か月ぶり。語り部の平均年齢が70歳を超える中、滝下さんは「体力の続く限り、体験を語りたい」と誓った。15日から活動を始める。

 滝下さんは、水俣病の公式確認から2か月後の1956年7月、患者が多発した同市 茂道もどう 地区で生まれた。父親は漁師。汚染された魚介類を食べた母親の胎内でメチル水銀に侵された。

 生まれつき手足が不自由ではっきりと声を出すことができない。小学校では歩き方をからかわれ、暴言を浴びたこともある。中学卒業後、仕事は見つからなかった。転機は22歳の時。同じ胎児性患者らと一緒に、県出身の歌手・石川さゆりさんのコンサートを水俣市で開いた。大盛況だった公演で自信を深め、ミカン選別などの仕事に就いた。結婚して子供も授かった。

 2年前、石川さんの公演を39年ぶりに成功させた。犠牲者慰霊式では患者・遺族代表として、祈りの言葉を述べた。「生まれたときから健康な自分を知りません」と半生を振り返り、「私たちが精いっぱい生きることが、未来に向かって生きている誰かの心の支えになれば」と語った。

 昨年4月、語り部だった幼なじみの小児性患者、前田恵美子さんが64歳で亡くなった。自身も車いす生活を送っていたが、「今度は私が語らなくては」との思いがわき、語り部になることを決意した。

 10日、水俣市役所で、高岡利治市長から語り部の委嘱状を受け取った。資料館語り部の会の緒方正実会長(61)は「体験を多くの人に伝えてもらうことで、水俣病を教訓として生かすことにつながる」と期待する。

 滝下さんは「胎児性患者の仲間の多くは症状が悪化し、歩いたり、しゃべったりできなくなっている。仲間の代わりに体験を語っていきたい」と意気込んだ。

講話の負担軽減へ 「伝え手」制度開始

 資料館の語り部制度は1994年に始まった。滝下さんを除く10人のうち、3人は体調不良で活動を休止中。平均年齢も73歳と高齢化が進む。

 語り部が行う講話は年間約300回に上る。資料館は語り部の負担軽減のため、昨年11月、支援者らによる「伝え手」制度を開始した。伝え手は、患者支援団体の元職員や原因企業・チッソの元社員ら4人(64~72歳)。水俣病を巡る闘争の歴史などを来館者に伝えている。

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