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訪問診療にできること~最期まで人生を楽しく生き切る~

コラム

94歳の映画人、2度の脳出血、要介護で仕事を続ける

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年齢と身体的機能・社会的機能・精神的機能

 私たちは生き物ですから、身体的な機能にはピークがあります。人間の場合、筋肉も臓器も、おおむね20歳くらいが最もポテンシャルが高いと言われています。そして、そこを過ぎると、徐々に身体の機能は低下していきます。誰でも30代、40代と年を重ねていくと、体力の低下や疲れやすさを自覚するようになりますよね。つまり、20歳を過ぎると、すでに人生は「下り坂」に入ってしまうのです。しかし、20歳を過ぎたからといって、私たちは人生に悲観することなく、前向きに楽しく生活しています。体は日々弱っていくのに、どうして前向きでいられるのでしょうか。

体は衰えても、精神的な機能は成長する

 それは、私たちは決して筋力や体力だけで生きているわけではないからです。私たちの生きる力の源、それは人と人とのつながり、つまり社会的な機能です。誰かの役に立っている、誰かから必要とされている、誰かのために頑張りたい。そんな社会の中での「役割」や「居場所」は、私たちが健康に生きていくために非常に重要な要素です。
 しかし、日本では、特に男性は社会とのつながりの大部分が仕事に関係したものです。定年制度のある日本では、自営業者や経営者を除けば、多くの人が60代で仕事を通じた社会的機能を半強制的に剥奪されてしまいます。そして地域には体力も意欲もまだまだあるのに、役割や居場所を失い、ただ時間が過ぎるのを待っている前期高齢者がたくさんいます。
 そしてもう一つ、私たちには重要な機能があります。それは精神的な機能です。私たちの心の成長は生まれた時から始まって、死ぬまで続きます。たとえ認知症になっても精神性は保たれると言われています。

人生は四つのフェイズに分かれる

 私たちの一生をこの三つの機能に分解して考えてみると、私たちの人生は大きく四つのフェイズに分かれます。第1段階は、すべての機能が成長していく子供たち。第2段階は、身体的な機能低下が始まるものの、社会的・精神的には成長が続く青年期から実年期、主に生産年齢と言われる年代。第3段階は、身体機能はある程度保たれているものの、社会的な役割を急速に喪失していく前期高齢者。そして第4段階は、身体的・社会的機能は大きく低下し生きたいように生きられない、しかし精神的機能は成熟しており、そのギャップに苦しんでいる後期高齢者。

 超高齢化と言いますが、一概に高齢者といってもさまざまです。そして、人生の最終段階で私たちを苦しめるのは、身体の機能の低下だけではないのだ、ということがわかると思います。

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佐々木淳(ささき・じゅん)

 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。1973年生まれ。筑波大医学専門学群卒。三井記念病院内科、消化器内科で勤務。井口病院(東京・足立区)副院長、金町中央病院(同・葛飾区)透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック(在宅療養支援診療所)設立。2008年、団体名を悠翔会に改称。首都圏12か所で在宅療養支援診療所を運営する。

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