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渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」

コラム

お口の掃除で認知症を予防できるか?

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お口の健康と認知症に関係があるのは確か

 政策声明の歯科医師チームは、世界中の論文をチェックして、お口の状態に関連して、認知機能の低下や認知症の発症を促す「促進因子」と予防につながる「防御因子」に分けてポイントをまとめています。政策声明を基に表にしてみました。整理しながらいくつかの論文を読んでみましたが、山本さんの言葉通り、お口と認知機能や認知症との間の関係を示す研究報告は多数あっても、因果関係にはまだ議論があるようです。

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 歯周病は、アルツハイマー型と脳卒中などがきっかけで起こる脳血管型のいずれの認知症とも関連が示されています。歯茎の炎症が出す物質や歯周病菌の毒素は歯茎の血管を通って全身に回ってしまいます。それが直接、間接に脳に影響する可能性があるということです。

 肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病や、それらが集積したメタボリックシンドロームは認知症の発症を促進する要因であると同時に、歯周病との関連が報告されています。歯周病は糖尿病の血糖管理に影響し、逆に糖尿病が歯周病を悪化させます。そのため国でも糖尿病を診療する医師と歯科医の連携強化を進めています。歯茎の炎症から出るサイトカインという物質が、糖を取り込むインスリンの働きを抑えてしまうことなどが因果関係として指摘されています。

栄養を取るためにお口の管理は大切

 表にある促進要因の「低栄養」と表でその下の「防御要因」の「健康な食事」は表裏の関係です。歯の喪失などでよく噛めなくなると、低栄養を招きます。厚労省の国民健康・栄養調査(2017年)によると、65歳以上の高齢女性の20%、男性の13%は低栄養の傾向、つまり痩せすぎです。「なんでも噛んで食べることができる」人の方が、「噛んで食べることができないものがある」人よりも低栄養の人が少ないというデータもあります。そして低栄養で身体が弱ってしまうと認知機能にも悪影響を及ぼすとされています。

 声明をまとめた葭原さんは「口腔と認知症の間を一番はっきりとつなぐのは栄養だと思います。咀嚼に障害が出ると、微量な栄養素も含めて栄養バランスが悪くなることを示す多くの報告があります。その結果、栄養状態が悪くなり認知機能の低下につながるのではないでしょうか」と指摘しています。

 また最近は、社会活動への積極性と歯の状態、それと認知機能の関係を示す研究も多くなっているそうです。社会活動や趣味の取り組みが活発な人は、歯が多く残っている。歯の健康状態がいい人の方が、活動範囲が広く、認知症が少ない――といった傾向が示されています。

認知症とのかかわりの究明はこれから

 お口の中の状態がどのように、どの程度、認知症にかかわっているかの詳しい究明はまだこれからです。山本さんたちは昨年、「認知症と口腔機能研究会」を設立し、歯科医だけではなく、医師や基礎医学の研究者などとともに、認知症とお口の健康との関係の研究を進めようとしています。

 こうした因果関係の研究には時間がかかるのかもしれませんが、私たち一般人がやるべきことはもうわかっています。歯周病を治療して歯を残す努力をし、たとえ歯を失っても、入れ歯やインプラントなどで噛める状態を保つこと。そのために最も重要なのは、毎日のお口の掃除のレベルアップだと思います。

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★【完成版】しあわせの歯科医療2 300-300

渡辺勝敏(わたなべ・かつとし)
読売新聞記者(メディア局専門委員)。1985年入社。 秋田支局、金沢支局、社会部を経て97年から医療を担当。2004年に病院ごとの治療件数を一覧にした「病院の実力」、2009年に医療健康サイト「ヨミドクター」を立ち上げた。歯科については歯茎や歯根があやしくなってきた10年来、患者としても関心を持たざるを得なくなっている。立命館大学客員教授。

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