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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

医療・健康・介護のコラム

親の介護は「同居」か「施設」?…私が選んだ第3の道

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「冷静になれる時間と空間」を確保

 ライターとして、認知症をはじめさまざまな理由で親御さんを介護している方々に取材をしていく中で、「同居という選択肢もあったけど、あえて別居しています」という方が、意外にも少なくないことを知りました。

 別々に暮らしているからといって決して親御さんを見放したわけではなく、介護サービスなどを上手に利用して、自分にできることは自分で、人の手を借りることができる部分は人に頼って、ちょうどよい距離感で介護をしているようです。

 「介護している空間から物理的にも精神的にも離れて、冷静になる空間と時間を持つことの重要性」といったことについて、言葉は違えど、みなさん口々に訴えます。さまざまな事情で別居は難しくても、自分の車を持つことでカバーしている方もいました。

キャパ超えて心身に不調…その経験から強く共感

 家族に介護が必要になったら、「同居して介護をする」、それが不可能ならば「施設に入所してもらう」のが当たり前だと思っていた私は、彼らの介護生活に衝撃を受けました。最初は驚きつつも、心のキャパがすぐにいっぱいになり、心身に不調をきたして心療内科のお世話にまでなった身として、次第に彼らの考えに強く共感していったのです。そして、結婚という人生における大きな転機に、両親と別居することを選択しました。

 母さんの負担などを考えると、実家を出ることに葛藤がなかったといえばうそになります。ところが、母さんも「しんどいときは、娘の家に行けばいい」という選択肢ができて、父さんがデイサービスに行っている時間に、しばしば我が家に遊びに来ていました(最近は調子が悪く、それができなくなり心配……)。さらに、ヒロさんが長期の海外出張のときなどは、私が、仕事と家事と子育てを1人で担う「ワンオペ育児」で行き詰まると、実家に行きリフレッシュできるという逆パータンの利点も!

 そもそもの狙い通り、同居していたときよりも、客観的な言動ができるようになった自覚もあります。正直、両親のどちらかが具合が悪いときなど、頻繁に実家に通うのがしんどいこともあるのですが、そんな場合でも、しんどいからこそ視野が狭くなるのを、「介護している空間」から一度離れて自宅に戻ることで、視野も気持ちもフラットになるメリットをより強く感じるのです。ヒロさんも、実家の介護空間から自宅に戻りクールダウンする私の姿を見て、今はこのスタイルがベストだということを理解してくれているようです。

「別居」を選択肢の一つに

 今は比較的、両親の状況が落ち着いているから別居が可能であって、遠くない将来、どうしても同居しなくてはならない状況になるかもしれません。また、人それぞれに事情や考え方があり「やはり同居がベスト」という方もいるでしょう。それを否定するつもりはまったくありません。ただ、介護生活において、視野が狭くなり、日々しんどさを感じているのならば、「別居」という選択があることも知っていてほしいのです。(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介はこちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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