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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸

医療・健康・介護のコラム

アンチエイジングは、活性酸素やAGE対策にあり

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 人類はいにしえのころからアンチエイジング(抗加齢)を求めてきました。「不老不死」ですね。紀元前3世紀、秦の始皇帝は中国全土で不老不死の薬を探させたと伝えられてきましたが、中国で2002年に見つかった大量の木簡の中に、実際に秦の始皇帝が国内各地で不死の薬を探すよう命じた布告や、それに対する地方政府からの返答が含まれていたそうです。8世紀、唐の玄宗皇帝の寵妃ちょうひ、楊貴妃は美容のためレイシ(ライチ、茘枝)を愛用し、中国の南部から都の長安まで早馬で運ばせたエピソードもよく知られています。

成長ホルモン投与は効果があるのか

  始皇帝の時代から2200年を経た1990年代、ボストンのラドマン博士が「成長ホルモン」を高齢者に与えると、若返りの効果があったと発表した時、これぞ「不老不死の秘薬」と評判を呼びました。「アンチエイジング」(抗加齢)という言葉が使われるようになったのはこの頃からです。
 我々の体は「成長ホルモン」だけでなく、甲状腺ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンなど様々なホルモンが細胞機能を活性化し、また維持してくれていますが、加齢とともに減少していきます。中でも成長ホルモンは20歳代を超えると急速に減少するので、その補充が若返りにつながるのではというのは当然の発想かもしれません。ですが、僕の知人の内分泌の専門家などはこのホルモン補充療法に疑問を持っていました。ホルモンの減少で老化が始まるのか、老化の付随現象としてホルモンも減少するのか、その因果関係がはっきりしないまま、やみくもにホルモンを与えるのはいかがかという意見でした。
 また、ラドマンらの研究対象は人数が十分でなく、その若返り効果もなんとなく元気になったという程度なので、アンチエイジングのための成長ホルモン投与は間もなく廃れていきました。しかしこれをきっかけに、医学としてアンチエイジングが発展し、老化の原因やその対処方法が科学的に追究されるようになったのです。

サプリメントの8割は、活性酸素対策

 次に老化の原因として浮かび上がったのが、老廃物の蓄積で、その一つが「活性酸素」です。我々の細胞にはミトコンドリアという器官が存在し、酸素を使って糖分を燃やし、エネルギーを産生しています。その過程で数%ですが、活性酸素という悪さをする酸素が発生する。これが体の細胞や組織にとっついて、文字通りびさせてしまう。しかも錆の厄介な点は、周囲の組織に伝染していくことです。
最近、古いマンションの建て替えが問題になっていますが、一番多い問題は水道管の劣化です。ゴミや錆で詰まってしまう。同じようなことが血管でも起こります。すべての臓器は血管で養われます。カナダの有名な内科医オスラー博士が、血管の老化の度合いが体の老化の度合いを表すとまで言っているのはこのためです。
 血管の老化を促すのが活性酸素であり、またその血管によって活性酸素は全身に運ばれもするわけです。そうして全身が錆びついてしまうのが老化の原因の8割を占めるとさえ、活性酸素の専門家は主張しています。
 この活性酸素の産生を抑え、作られた活性酸素を分解するようなサプリメントが次々と開発されてきました。実は今販売されているサプリメントの8割は活性酸素を抑える、つまり抗酸化作用を目的としたものです。例えば、よく耳にするポリフェノールは植物由来の抗酸化物質です。赤葡萄ぶどう酒の成分で抗酸化作用が取りざたされているレスベラトロールもポリフェノールの一種です。
 そのほか、コエンザイムQ10や SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)などを耳にされた方も多いでしょう。これも抗酸化物質です。それだけではありません。必須の栄養素とされるビタミン類の中の、ビタミンCやEも抗酸化効果が重要な働きです。

最近注目されているAGE

 最近、老化の原因である老廃物として注目されているのが、AGE(Advanced Glycation Endproduct=終末糖化産物)という化合物です。余った糖分に活性酸素が作用し、さらにたんぱく質と結合して略してAGEを形成します。これがまた、細胞や細胞間物質に取りついて劣化させます。身体中がキャラメル漬けになったイメージです。この対策はバランスのとれた食事と適度な運動で、糖尿病予防にもつながります。これからしばらくはこのAGEが話題となるでしょう。

どのサプリがいいか

 最後にサプリメントについて僕の考えを付け加えますと、サプリメントはあくまでサプリメント、つまり補助手段であり、基本はバランスのとれた食事です。しっかり3食、食事をとっていればサプリメントはいらないとさえ言えます。だが、今の社会生活の中でそれが守りにくい。現在の食材は見た目がきれいでも、栄養素は昔の10分の1というのもありますし、また高齢者は消化吸収が衰え、摂取したものが十分に体内に入らないということもあります。ビタミン・ミネラルなどで高齢者にとって必須と考えていいサプリを絞り込むことがこれから必要です。とりあえず現時点ではあまり難しく考えず、ミネラルの添加されたマルチビタミンを必須と考え、そのほかという場合はオメガ3そしてアスタキサンチンなどをお勧めします。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オールバニ大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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