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明るい性の診療室

妊娠・育児・性の悩み

男女を振り回す「神話」

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大川玲子(婦人科医)

 「性の神話 男性版:ペニスの大きさ礼賛、女性版:最初のセックスで処女膜が破れる」

 1997年にスペインで行われた世界性科学会(現・性の健康世界学会=World association for sexual health)で、インドの性科学者プラカシュ・コタリ博士が講演した内容です。

 彼は性の喜びを礼賛し、愛や性行為(セックス)のあり方を論じた古代インドの性の経典「カーマ・スートラ」を信奉する医師です。講演では、インド人男女が性を巡り、こうした神話に振り回されている実情が明らかにされました。

 講演の主な議題は、男性器の大きさへのコンプレックスについてでしたが、会場から「女性の神話は?」と質問が上がりました。「最初の性行為で処女膜が破れる」ことという答えが示され、誤った理解が社会に浸透してしまっていることへの驚きで、会場全体が静まりかえりました。ですが、会場にいた私は「やっぱり! 自分の周りだけでなく世界中に広がっている問題だ」と妙に納得したのを覚えています。

膜が塞いでいるはずがないのに

 読者のみなさんはいかがでしょうか。「処女膜って最初の性行為で破れるものでしょ。何が神話なの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。処女膜が女性器(ちつ)を塞いでいて、初めての性行為で破れて腟が開通する、と思っている人もいるかもしれません。少し考えれば、「性行為の未経験者でも月経で腟から血が出る。膜が塞いでいるはずがない」と気付くはずです。

 処女膜は、腟の入り口を縁取っているひだ状の粘膜組織で、外と腟内との境界です。柔らかく伸びの良い組織で、優しく広げれば破れません。性交を繰り返すうち表面は磨耗し、時には破れ、出産でさらに磨耗しますが、なくなるわけではありません。

 性行為のために男性は勃起する必要がありますが、女性が性的に興奮すれば腟は充血して伸びやすくなり、処女膜もともに伸びます。潤いが加わり、男性器を挿入しやすくなります。

 一方、緊張すると、男性が勃起できないように、腟や処女膜は反応しません。伸びにくいままです。ここで男性器を無理やり挿入すると、女性は痛みを感じ、処女膜は断裂し出血することがあります。

 花嫁は緊張しているので出血することも多いようで、いつからか処女膜が破れ、出血するという神話が生まれ、出血が処女であることの証しかのように思われてきました。初めて性行為に臨んだ女性の出血に関する統計や研究はほとんどありません。このような事情から、妻が出血しなかったことで夫が疑心暗鬼になり、離婚に至るような不幸な例はあります。

誤解が招く恐怖感

 性行為に関する適切な教育がないまま、なぜかほとんどの人が耳にする神話によって、女性はひそやかに初めての性行為を恐れています。婦人科の筆者のもとには、「体が傷つくイメージから怖くて性行為できない」という女性がやってきます。

 性の反応がうまく起こらない、性行為がどうしてもできないという性機能障害を解決する「セックス・セラピー」では、女性たちのそうした恐怖に共感しつつ、解決のお手伝いをしていきます。パートナーにも極力同行してもらいます。

カップルの歩みに寄り添うセラピスト

 セラピーは「カウンセリング」を中心に、「教育」「行動療法」も交えて行います。医師、看護師、心理士などで、性の知識や対話の技能を身に付けたセックス・セラピストが対応します。

 カウンセリングは、セラピストが相談者を知り、相談者が自分を知るために必要な作業です。本来、カウンセリングでは指導をしないものですが、処女膜の話のように「知らないこと」「誤解」が問題を大きくするので、セラピストが正しい知識を教育していきます。

 課題の解決に向けては、精神科分野から生まれた、苦手なことを克服するのに有効な行動療法がよく用いられます。課題を把握し、目標を設定したら、セラピストは目標に近づくための宿題を出します。次のセラピーで相談者は成果を語り、次の宿題が設定されるという流れです。

 水泳を例に考えます。泳ぎが苦手な子供は、プールに足を入れる、全身を水に入れる、うつ伏せの形で浮く、と順を追って水に慣れていきます。本人が「これは大丈夫」と自信をつけることが大切です。

 性のセラピーでもいきなり性行為を試すのではなく、パートナーの手を握るなどから始め、一歩一歩進みます。一歩進むのに少しの勇気が要るので、セラピストがカップルの伴走者となります。

 日本性科学会では、研修を受けた医療職をセックス・セラピストとして認定しています。主に相談を受けるセックス・カウンセラーも養成しています。カウンセラーは医療職のほか教育職なども務めています。

 最近はインターネットの検索で専門家を探す人も多いですが、学会はセラピストやカウンセラーを紹介しています。誤解によって性の問題に悩むカップルは、専門家に相談してほしいと思います。

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大川玲子先生

大川玲子(おおかわ・れいこ)
千葉きぼーるクリニック婦人科医師
 1972年、千葉大学医学部卒業。同大助手、国立病院機構千葉医療センター(旧国立千葉病院)産婦人科医長などを経て、2013年から現職。日本性科学会理事長、NPO法人千葉性暴力被害支援センターちさと理事長。

今井伸(いまい・しん)
 聖隷浜松病院リプロダクションセンター長、総合性治療科部長
 1997年、島根医科大学(現・島根大学)卒業。島根大学助手、聖隷浜松病院泌尿器科主任医長などを経て、2019年4月から現職。日本性科学会幹事、日本性機能学会評議員、日本泌尿器科学会指導医、島根大学臨床教授。

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1件 のコメント

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初めてのセックス

くろすけ

初めてのセックスの時は痛かったし出血したなー。あれは緊張してたからだったのか。リラックスしてたら痛くもないし、出血するほどのこともなかったのかな...

初めてのセックスの時は痛かったし出血したなー。あれは緊張してたからだったのか。リラックスしてたら痛くもないし、出血するほどのこともなかったのかなー。
初めての時は、相手は喜ぶものなのかな?今時でも。

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