うんこで救える命がある 石井洋介
医療・健康・介護のコラム
うんこで読み解く病の今昔
病気を自覚しにくい時代到来
発病初期に症状が出にくい病気が多くなり、「病気であると自覚しにくい時代」が到来したといえます。
本人が発病を自覚していなければ、病院や診療所を受診しないため、そもそも治療を始められません。健康診断などで病気が見つかり、医師が「治療を始めたほうがいい」と説明しても、本人に自覚症状がないと、仕事を休んでまで病院に行こうという気持ちが湧かないのもよく分かります。
「どうすれば症状が軽いうちに受診をしてくれるか」「処方する薬をどうすればきちんと飲んでもらえるか」。病気を早く見つけて治療を始めてもらう方法や、治療を続けてもらう方法を日々考えています。
人々がやる気を起こし、行動を変える「行動変容」の視点を僕は重視しています。人の感情に作用して人の行動を変える催眠術のような処方は存在しません。行動を変えるのは患者さん本人なのです。
少し前までは僕ら医師が患者さんに治療の方向性を一方的に示し、治していました。でも今は、医師と患者が「一緒に治す」時代にシフトしてきていると思います。ベストな治療は、皆さんの協力なしには提供できないと考えています。
じっくりうんこの観察を
ここで、感染源として隔離されたうんこに再び注目したいと思います。サイレントキラーと呼ばれる大腸がんですが、血便が出る、下痢と便秘を繰り返す、便がだんだん細くなる、残便感がある、というような症状が他の症状に比べて比較的早い段階で出ることがあります。いずれもうんこをじっくり観察していなければ異変に気が付きません。
うんこは、トイレで自動的に流されてしまうほどに嫌われる存在になってしまいました。ですが、皆さんが気にする習慣を持つことで、もしかしたら大腸がんの症状を自覚できる瞬間があるのではないかと考えています。また40歳以上の方であれば年に1度の大腸がん検診が推奨されています。うんこの変化が出るさらに前の段階で引っかかる可能性もあるため、こちらも併せて覚えておいてください。
どんな変化も小さな一歩から始まります。試しに今日から便を観察する「観便」を始めてみませんか? 観便ができるようになったら、次は毎日のウォーキングというように、段階を踏んで、健康な人生を送るための小さな小さな行動変容を起こすきっかけになれば幸いです。
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