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僕、認知症です~丹野智文45歳のノート

もっと知りたい認知症

「認知症」とかけて「眼鏡」ととく その心は…

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眼鏡は一人ひとり違うのに

 日本には近視の人が多いといいますから、このコラムを読んでくださっている皆さんの中にも、眼鏡をかけている人がたくさんいると思います。もし私が、「その眼鏡を誰かと貸し借りすることはありますか?」と尋ねたら、きっと「そんなわけないでしょう。他人の眼鏡は度が合いませんよ」と言われるでしょうね。

 「近視」といっても、視力0.7くらいで、眼鏡が必要なのは車を運転する時くらいという人もいれば、視力0.01で、眼鏡なしでは近所のコンビニに行くこともできない人もいます。もしも、全員が0.01の人の眼鏡をかけたらどうなるでしょうか? それほど近視が進んでいない人は、視力が上がるどころか、目がくらくらして全く動けなくなってしまうんじゃないでしょうか。

 これと似た状況にあるのが、認知症の人たちなのです。

「介護」中心の支援は合わない場合も

 認知症の公的な支援といえば、介護保険が中心です。しかし、高齢で心身の衰えが進んでいたり、元々、他の障害や病気を持っている場合を除けば、認知症と診断されたからといって、すぐに介護が必要になるわけではありません。

 でも症状はあるので、物忘れをしたり道に迷ったり、日々の暮らしの中で困っていることがたくさんあります。60代以下の人であれば、仕事をどうやって続けるか、家族をどうやって養うかということが、とても大きな問題です。

 また、ほとんどの人は、最初は認知症の情報がなく「何も分からなくなる病気」といったイメージしかないので、認知症になったことに衝撃を受け、絶望してしまいます。そうした一人ひとりの悩みや不安に寄りそうような支援は、現状ではとても乏しいのです。

 私自身、診断を受けた時は39歳で、相談のために訪れた区役所で「40歳未満の人は介護保険が使えないので、支援は何もありません」と言われました。その時のことは以前のコラムでも書きましたが、あれから6年たった今も、状況はそれほど変わっていません。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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