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明るい性の診療室

妊娠・育児・性の悩み

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今井伸(泌尿器科医)

 「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。――みうらじゅん」(「されど人生エロエロ」文芸春秋より)

 おそらく僕も、人生の2分の1はいやらしいことを考えて生きてきました。

 いきなりこんなことを書くと、眉をひそめる方々が大勢いることを承知の上で書かせていただいています。

いやらしい雑誌が「教科書」に

 中学生だったある暑い夏の日に、一冊の「いやらしい」雑誌と出会ったところから僕の人生は変わった、と言っても過言ではありません。その雑誌を、性的なことに先入観のなかった僕は「誰が何と言おうとこれは自分にとって必要な内容だ!」と本能的に感じ、ボロボロになるまで繰り返し読みました。分からない言葉は、広辞苑を引っ張り出して調べました。

 その雑誌からは多くを学びました。避妊せずに性行為(セックス)をすると子供ができてしまう可能性がある、避妊のために男性はムードンコ(避妊具のコンドームの逆さ読み)を着ける、初めての性行為で男性は緊張し大抵うまくいかない――などです。性行為は2人が楽しめるものでないといけないことや、女性は強い痛みを感じる場合があることも書かれていました。

 事実とは異なる内容や偏った見方の表現も含まれていたと思いますが、いやらしいとされた雑誌が、若い頃の僕にとって唯一無二の「教科書」となったのです。性行為に関して必要な情報を、親を含め大人は誰も教えてはくれないし、学校の授業でも触れられなかったためです。

 男女問わず、多くの人が一生のうちにマスターベーション(自慰)や性行為を経験します。毎日行ってもおかしくありません。ご飯を食べたり眠ったりすることと同じくらい自然な営みです。それなのに、日本では「性行為(セックス)=いやらしいこと」という考え方が浸透しています。その結果、人々が性行為についての情報を知る機会があまりに少なくなっていると感じます。

 僕が医師になり、男性の性器を診る泌尿器科を専門に選んだのも、このように性に関する情報が少ない状況下で性行為ができなくて悩む男性を一人でも多く救いたいと考えたからでした。

緊張は大敵

 男性対象の不妊外来で診察していると、結婚して性行為を試みてもできないというご夫婦が時々来られます。性の診療領域でこうした性行為ができない状態を「未完成婚」と呼びますが、多くの場合、夫妻のどちらか、あるいはどちらもが結婚前に性行為の経験がありません。新婚旅行の時が初めての試みでうまくいかなかった夫婦もおられ、どの方々も対処法が分からず深刻に悩まれています。

 ここで男性の勃起に焦点をあてると、緊張は大敵であると知っておく必要があります。初めての結婚式で緊張し、初めての新婚旅行で緊張し、初めての性行為の試みに緊張する。このような状況できちんと勃起して性行為を成功させるのは至難の業です。

 性行為の経験があっても、緊張していたら勃起できません。ある日、高根の花だった彼女と交際することになった男性が来院されました。念願かなったはずでしたが、彼女の前だと緊張して勃起せず性行為ができないと悩んでおられました。「私のことが好きならどうしてできないの?」とも責められ、さらに萎縮いしゅくしたということでした。心当たりがある男性もおられるのではないでしょうか。「大好きなのに勃起しない」は十分あり得る話なのです。

 厚生労働省の補助を得て行われた泌尿器科医による男性不妊症に関する調査において、調査方法に違いはあるものの、男性不妊の原因に占める勃起障害と射精障害の割合は、1997年(平成9年)度には約1%であったのに対し、2015年(平成27年)度の調査では13%強を占めるまでに至っていました。このように、勃起や射精の問題に悩む若い世代の男性を診察する機会が近年増えており、僕たちは大きな問題ととらえています。

神経の働きが関係

 日常生活でも、大事なスピーチやスポーツの試合前や試合中などの緊張した状態で、勃起が起きるのは想像しにくいと思います。リラックスできる相手、リラックスできる環境と、不安がない状態がそろってやっと勃起できるのです。医学的には、リラックスは副交感神経が活発な状態です。ただ、射精の段階に進むと、かなり集中していないとうまくいきません。こちらは交感神経が活発な状態です。性行為の成功には、神経の働きが深く関わっています。

 性行為に自信のない男性方に一言。自分にとって大きなイベントでは緊張感が高まりますが、起こりえる事態を知っていれば、過度に焦ったり落ち込んだりすることもなくなります。性行為がうまくいき、カップルの良好な関係が築かれることを願い、本連載では性の話題を一つずつ紹介していきたいと思います。

(本コラムは婦人科医の大川玲子医師と、泌尿器科医の今井伸医師が交互に執筆します)

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明るい性の診療室
大川玲子先生

大川玲子(おおかわ・れいこ)
千葉きぼーるクリニック婦人科医師
 1972年、千葉大学医学部卒業。同大助手、国立病院機構千葉医療センター(旧国立千葉病院)産婦人科医長などを経て、2013年から現職。日本性科学会理事長、NPO法人千葉性暴力被害支援センターちさと理事長。

今井伸(いまい・しん)
 聖隷浜松病院リプロダクションセンター長、総合性治療科部長
 1997年、島根医科大学(現・島根大学)卒業。島根大学助手、聖隷浜松病院泌尿器科主任医長などを経て、2019年4月から現職。日本性科学会幹事、日本性機能学会評議員、日本泌尿器科学会指導医、島根大学臨床教授。

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2件 のコメント

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言わないとわからない

なむ

好きだけどできないって事を相手にも伝えないと、相手も自分に魅力がないならダメなんだと思ってしまう。 できない理由を包み隠さず話すべき。 でも、大...

好きだけどできないって事を相手にも伝えないと、相手も自分に魅力がないならダメなんだと思ってしまう。
できない理由を包み隠さず話すべき。
でも、大概の男性は、くだらないプライドのためにだんまり。
お互いに幸せになれないんだろうな。

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意外と大事なことは教えない教科書

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

女の口説き方とか、焦げ付き防止方法とか、教科書に書いてないですしね。 金融や経営、料理や会計など、自活の手段と並んで、もっと時間を割いてほしい気...

女の口説き方とか、焦げ付き防止方法とか、教科書に書いてないですしね。
金融や経営、料理や会計など、自活の手段と並んで、もっと時間を割いてほしい気もします。

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